疥癬 は皮膚表面にダニが奇生する感染症で、ヒトからヒトにうつります。通常疥癬と角化型疥癬があり、いずれも皮膚に 症状 が出ます。通常疥癬は丘疹、結節、疥癬トンネルが代表的な皮膚症状で、丘疹は強いかゆみをともないます。
診断にもっとも役立つのは疥癬トンネルです。角化型疥癬の病変部は角質が肥厚して分厚くなります。肥厚した角質はかんたんにはがれ落ちますが、ここにもたくさんのダニが寄生しており、感染源となります。
疥癬は皮膚に症状が出る病気で、ヒトからヒトにうつります
疥癬とはどんな病気?
疥癬(かいせん)は皮膚の表面にダニ(ヒゼンダニ。疥癬虫とも言います)が奇生する感染症です。ヒゼンダニはとても小さく雌成虫で0.3~0.5mm程度、雄成虫で0.2~0.3mm程度しかありません。皮膚の角層内に寄生し、角質の垢を食べています。
血を吸ったりはしません。雌は皮膚表面を動き回って雄を見つけて交尾し、その後角層にもぐってトンネルを掘り進めながら、1ヶ月程度の間に毎日2~3個程度の卵を角層内に産みます。卵は2~3日でふ化し、2週間程度で成虫になります。
日本では第2次世界大戦の後、衛生環境が悪かったために疥癬がシラミとともに大流行しました。その後は減少していたのですが、近年では免疫力が低下した高齢者が老人保健施設やデイケアなどで集団感染する例、さらにそのような方を介護する人の感染例が増加しています。
ヒゼンダニはヒトからヒトにしか疥癬しないために、ペットなど動物からは感染しません。疥癬は通常疥癬と角化型疥癬(以前はノルウェー疥癬と呼ばれていました)の2つのタイプに分類されています。
通常疥癬と角化型疥癬とで一番異なるところは、奇生しているヒゼンダニの数です。通常疥癬に奇生しているダニは数十匹以下であるのに対して、角化型疥癬では100万匹以上にも達します。そのために角化型疥癬は非常に強い感染性があります。
通常疥癬の症状
通常疥癬でも角化型疥癬でも皮膚症状が出ます。通常疥癬の主な皮膚症状は丘疹(ブツブツ)、結節(けっせつ。1cmくらいの盛り上がった大きな皮疹)、疥癬トンネルの3つです。
頭部や顔面以外の全身に見られる赤い小さな丘疹はヒゼンダニが脱皮した皮や糞に対して、皮膚がアレルギー反応を起こすためにできます。丘疹はものすごくかゆく、夜も眠れないほどかゆくなることも少なくありません。そのため丘疹の周囲にはたいてい掻きむしった痕があります。
第3者が見ても目立つのですが、ふつう丘疹の部位にはヒゼンダニはおらず、診断にはあまり役立ちません。またこの丘疹を見ただけでは、よくある湿疹などと区別することはできません。
結節は手足、へその周囲、おしり、男性の陰嚢・陰茎に多く出現します。結節表面には疥癬トンネルや虫体(黒い点にしか見えません)が見つかることがあるために、診断に役立ちます。
ただし陰嚢や陰茎の結節は患者さんが自分からアピールすることは少ないために、疥癬を疑った場合は必ず陰嚢や陰茎も観察することが大切です。
最後の疥癬トンネルは上述したように雌が掘り進んだ巣穴で、疥癬に特徴的な発疹です。線状のトンネルの長さは5mm程度、幅は0.5mm程度の小さなものです。入り口側の皮膚表面はめくれて幅広くなり、トンネルの先端部分には虫体を認めます。
疥癬トンネルは手や手の指に多く、特に手の指の間に多く存在します。また上記のように結節上に認めることもあります。診断価値が非常に高いために、疥癬を疑った医師はまずこの疥癬トンネルを探すところから始めます。
角化型疥癬の症状
角化型疥癬の病変部では角質が分厚く増生し、痂皮(かさぶた)や亀裂ができます。肥厚した角質は簡単にはがれ落ちるのですが、はがれた角質にもおびたたしい数のヒゼンダニが寄生しており、非常に高い感染性があるために注意が必要です。
通常疥癬とは異なり、角化型疥癬では頭部や顔面にも皮膚病変を生じることがあります。さらに爪にも病変が及ぶこともあり、その場合爪はもろくて分厚い形状になります。角化型疥癬のかゆみはさほど強くなく、かゆくないこともあります。
角化型疥癬は免疫力が低下した人(白血病や後天性免疫不全症(いわゆるエイズ)患者さん、免疫抑制剤やステロイドなど免疫を抑える薬を使用している人、寝たきりの高齢者など)に多く生じます。これに対して通常疥癬は正常の免疫力がある人にも起こりえます。
まとめ
疥癬は皮膚に症状が出る病気で、ヒトからヒトにうつります
疥癬とはどんな病気?
通常疥癬の症状
角化型疥癬の症状