自律神経失調症は大変耳にする機会が多い病気ですが、いまひとつその実体がつかめないといった方が多いのではないでしょうか。病院で検査をした結果、悪いところが見つからなかったので自律神経失調症とはどういうことでしょうか。
自律神経失調症 の 診断 についてご紹介いたします。
なぜ難しい自律神経失調症の診断
自律神経失調症の診断の難しさ
自律神経失調症の方は心身に実にさまざまな不調を訴えことが多いようです。体に限っても頭からつま先に至るまで除外される部分がないことからもその症状が多岐に渡っていることがうかがわれると思います。
しかも、例えば同じ胃炎の症状を呈していてもそれが暴飲暴食の結果であるのか自律神経失調症の結果であるのか、ある程度検査をしてみないと判別できないというような問題もあります。
また、ひとりの患者がいくつもの症状を抱えていたり、症状に波があることなども決して珍しくないために診断が難しく、時間のかかることが多い病気だと言えます。
最終的に患者に何らかの不定愁訴があって器質的疾患や精神障害がなく、自律神経の機能検査で異常があるときに自律神経失調症の診断が下ることになります。
自律神経失調症の診断の流れ
まず、医師による問診が行われます。昨今ではあらかじめ問診シートに記入した内容をもとに医師と対面して現在の症状、病歴、普段の生活、家庭や仕事先での人間関係などについて聞き取りが行われることが多いようです。とりわけ、症状が出始めた頃の生活について詳しく聞かれることが多くなります。
次に自律神経失調症を疑う症状の中にほかの病気が潜んでいないかという検査をします。例えば、動悸を訴える方には心臓の器質的な問題の有無をみるために心電図、CTスキャンなどの検査をします。
また、精神的な疾患でも動悸を訴える場合がありますので、その有無も検査する場合もあります。このように他の病気でないことを確かめていくことを除外診断と言います。
自律神経失調症の方の不定愁訴は非常に多岐に渡りますので、その検査も心電図やCTスキャンなどの他に脳波、レントゲン、超音波、MRIなどが駆使されます。
自律神経機能検査は自律神経そのものの働きについて調べるものです。それぞれの検査についてご紹介いたします。
シェロング起立試験は10分以上静かに横になっていた時と立ち上がった時の血圧の変化をみるものです。血圧に大きな変化がない場合は自律神経の機能は正常に働いていると考えられます。
立ち上がった時に血圧が大きく下がる場合には起立性低血圧といってめまいや立ちくらみの原因となり、自律神経の機能に異常があると考えられます。
立位心電図は横になっている時と立っている時の心電図を比べるものです。自律神経のバランスが悪くなると血管や心臓の働きをコントロールする力が弱まるため、立ち上がった時に心電図の波形が乱れます。
マイクロバイブレーションという検査は体の微細な振動を脳波と心電図を連動させて分析するもので、交感神経と副交感神経の緊張度を調べる検査です。20~25℃の室内で横になって利き手ではない方の親指にセンサーをつけて5分間微細振動を計測するという方法がとられます。
心拍変動検査は心電図の一拍ごとの間隔をコンピューターで解析して自律神経の働きをみるものです。
皮膚紋画症検査や鳥肌反応検査は皮膚に与えられた刺激がどのように残るかをみるものです。自律神経のバランスが乱れてくると皮膚をこすったりした場合にその影響がなかなか消えず、赤くなったり腫れあがったりするようなことがあります。
鳥肌は交感神経の緊張が立毛筋を収縮させるものですが、その反応の強弱をみることで自律神経の状態を知ることができるのです。
自律神経機能検査ではかならずしも異常が見つからないために心理テストが行われることもあります。これは症状の起こっている心理的な背景を調べるものです。心理テストでは性格的な特性や行動のパターン、神経症の傾向、ストレス耐性などが調べられます。
自律神経失調症の診断注意点
今回ご紹介したように自律神経失調症の診断で最も大切なことは自律神経失調症を思わせるような症状に潜んでいるかもしれない病気を見逃さないことです。
除外診断は手間も時間もかかりますが、まさに「急がば回れ」の気持ちをもって正しい診断を得ることが自律神経失調症からの回復への近道だと言えるのではないでしょうか。
まとめ
なぜ難しい自律神経失調症の診断
自律神経失調症の診断の難しさ
自律神経失調症の診断の流れ
自律神経失調症の診断注意点