逆流性食道炎 と聞いてまず思い浮かべるのは胸焼けや酸っぱいものがこみ上げてくるといった症状ではないでしょうか。ところが長引く 咳 の原因が検査の結果逆流性食道炎だったということがあるそうです。
そのメカニズムと対策についてご紹介いたします。
長引く咳の原因がまさかの逆流性食道炎
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎とはその名が示すように胃液や胃の内容物が食道に逆流して食道の粘膜に炎症を起こすことで生じる病気です。ご存知の通り胃液には食物を消化するために強い酸が含まれています。胃壁はこの強い酸から胃そのものを守る粘膜によって保護されています。
一方、食道の粘膜はこうした働きがありませんので、胃液や胃の内容物が食道に逆流すると炎症をおこしてしまうのです。
胃液や胃の内容物の逆流はさまざまな理由で生じます。まず、肉や脂肪分の多い欧米化した食生活を続けていると胃酸が過剰に分泌されるようになるというのが大きな原因です。
次いで老化や胃の手術などによって食道と胃の境目にある下部食道括約筋の機能が衰えることが挙げられます。近年、日本で逆流性食道炎の患者数が増えてきているのは食生活の欧米化と高齢化にその原因があると言われているのはそのためです。
逆流性食道炎の三大症状と言われているのは、胸に熱いものがこみあげてくる胸焼け、のどが詰まった感じで飲み下しが困難になる嚥下障害、酸っぱいものや苦いものが口にあがってくる酸の三つです。
逆流性食道炎が原因の咳
食道の一番上の部分は気管の入口にあたる喉頭に接しています。そのため、逆流した胃液や胃の内容物が食道の上部にまで達した場合喉頭に触れてしまうことがあるのです。
喉頭の粘膜も食道の粘膜と同じように胃液の酸を防御するような働きを備えていませんので、炎症を起こすことになってしまいます。その結果、咳が続いたり、声が出にくくなったり、声帯にポリープができたりします。
なかには喘息のような症状を訴える方もあるようです。喉頭に達した胃液が気管に吸い込まれて発症するという説と食道内に逆流した胃液が気管や気管支の神経を刺激するという説があるようですが、現在のところ、はっきりとしたメカニズムは解明されていません。
喘息の治療を続けているものの一向に症状が改善しない方で胸焼けなどの逆流性食道炎の自覚症状がある方は内視鏡での検査を受けてみるとよいでしょう。
逆流性食道炎が原因の咳の改善策
咳にはさまざまな原因があります。単に風邪の咳が長引いていると安易に考えていたところ、肺がんのような重篤な病気が隠れていたということもあります。いつもの咳ではないと感じたら、できるだけ早い目に専門医の診断を仰ぎ原因を特定する必要があります。
咳の原因が逆流性食道炎であるとわかるとパリエットやタケプロンなどプロトンポンプインヒビターと呼ばれる酸の分泌を抑える薬やガスモチンという腸管の動きを改善する薬などが処方されます。漢方薬を処方してくれる内科では半夏厚朴湯が処方されることもあります。
咳の応急処置として市販薬に頼る場合は原因が風邪ではないので風邪薬としての咳止め薬には効果がありません。胃酸の分泌を抑制する胃腸薬のガスター10やキャベジンコーワαなどがドラッグストアでも入手しやすいものです。
食生活で注意すべきなのはてんぷらや豚カツなどの揚げ物に代表される高脂肪食や炭水化物の過多です。また、アルコールやタバコは食道の粘膜を刺激するだけでなく、下部食道括約筋の機能を低下させてしまいます。
嗜好品であるコーヒーも胃酸の分泌を促進しますので、注意が必要です。その他、熱すぎるものや冷たすぎるものも粘膜を刺激してしまい咳を誘発することになってしまうことがあります。
唾液は酸を中和しますので、よく噛んでゆっくり食べるという習慣は腹八分目という食事の理想のためにも大切です。
食後は胃酸の分泌が増えますが、その時に横になると胃が食道より高い位置になってしまうため胃液の逆流が起きやすくなります。少なくとも食後30分は横にならない方がいいでしょう。
背中を丸めると胃を圧迫して、胃の内圧を高めて逆流を起こしやすくなります。姿勢に注意を払い、ベルトなどで腹部を強く締めつけることはやめた方がいいでしょう。
胸焼けを誘発しないように激しい運動は避けなければなりませんが、ウオーキングなどを習慣づけて内臓脂肪型肥満を解消することも大切です。内臓脂肪によっても胃は圧迫されるのです。
まとめ
長引く咳の原因がまさかの逆流性食道炎
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎が原因の咳
逆流性食道炎が原因の咳の改善策