たくさんの種類の薬剤の副作用で便秘が起こりますが、本来は便通を改善する目的で使う 下剤 が反対に便秘の 副作用 を起こしてしまう場合があります。とくに大腸刺激性下剤を長期にわたって連用している人によく起こります。
また大腸刺激性下剤で1回あたりの排便量が増えると次回の排便が遅れることがありますが、この現象を便秘と誤解し、さらに下剤を使用して悪循環にはまりこんでしまう人がいます。
下剤の副作用で便秘が起こります
薬の副作用で便秘が起こります
特に誘引がない便秘症を機能性便秘と呼び、一般的な便秘症はここに分類されます。これに対して何らかの原因によって起こる便秘を二次性便秘と言います。
二次性便秘には大腸がん、甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが不足する病気で橋本病が代表的です)、糖尿病、パーキンソン病などの病気によっておこる便秘や薬の副作用で起こる便秘があります。
薬の副作用で起こる薬剤性便秘はたくさんの種類の薬が便秘の原因となるために、決して珍しいものではありません。
特に高齢者ではどうしても服用している薬剤の種類が多くなりがちであるために、薬剤性便秘の頻度が高くなります。具体的には抗コリン薬、制酸薬、鎮咳薬、モルヒネ剤、三環系抗うつ薬、降圧薬、利尿薬などが便秘の副作用があることで有名です。
そして意外かもしれませんが、下剤でも便秘を生じることがあるのです。
下剤の副作用で便秘を生じることがあります
本来は便通を改善する目的で使う下剤が、反対に便秘の副作用を起こしてしまうことがあります。“下剤を使いはじめてしばらくはよく効いていたのに、だんだん効果がなくってきた”などのように、長い間下剤を使った後に起こるのが典型的なパターンです。
これは下剤や浣腸を長期間使用し続けたことで、大腸粘膜が便秘薬の刺激に鈍くなってしまい、そのために大腸の運動機能が低下することで便秘になってしまうことが原因です。
下剤の中でも特に大腸刺激性下剤を長期にわたって連用している人でよく起こる副作用です。大腸刺激性下剤にはセンナ(商品名プルゼニドなど)、センノシド(商品名アローゼン、ヨーデルSなど)、ピコスルファートナトリウム(商品名ラキソベロンなど)、大黄(商品名大黄甘草湯、麻子仁丸など)などがあります。
これらの薬は排便効果が大きいためについつい習慣的に連用する、あるいは自己判断で医師に指示された量よりも多く服用してしまいがちです。できるだけ2~3日排便がなかったときの頓服として使用するように心がけてください。
これだけでは十分な効果が得られない場合には、塩類下剤(酸化マグネシウムなど)など別の種類の下剤と併用することが効果的です。自己判断で大腸刺激性下剤を増量する前に医師に相談するようにしてください。
下剤による“ニセモノ”の便秘
適切な医学用語がないために“ニセモノの便秘”としましたが、以下に説明しているように、これは正確には便秘ではありません。しかしたくさんの患者さんは便秘であると誤解し、しかもそれが下剤のためであることに気づいていません。
ふつう私たちの排便では肛門に一番近い位置にある大腸(この部分を直腸と言います)にたまっている便が外に出ます。ところが上述の大腸刺激性下剤を使用すると、直腸よりももっと上流にある部分の便もいっしょに排便されます。
つまり、本当ならば次回以降の排便で外に出るはずの便が、前倒しで出てしまうのです。このような排便では、出はじめの便は比較的かたい、もしくはふつうのかたさですが、最後の頃は泥のような便が出るのが典型的です。
また次回分もいっしょに出ているために、排便量は比較的多くなる傾向があります。その代わりに、次の排便がなかなか起こりません。本来は毎日1回あった排便が、刺激性下剤を使用したことで2日に1回、あるいは3日に1回になるのです。
これを便秘だと誤解して、さらに下剤(自分で薬局で購入できるものも含みます)を使用するとどんどん悪循環にはまりこんでしまいます。便秘で悩んでいる人のなかに、かなりの割合でこのタイプの人がいると推定されています。
思い当たる点がある人はまずはお近くの医療機関の先生に相談されてはいかがでしょうか?
まとめ
下剤の副作用で便秘が起こります
薬の副作用で便秘が起こります
下剤の副作用で便秘を生じることがあります
下剤による“ニセモノ”の便秘