エリテマトーデス という病気をご存知でしょうか?10~30代の女性にかかりやすく、全身の臓器に病変がみられます。かつては腎不全による死亡が多かったものの、今では透析の普及により5年生存率は90%以上です。皮膚症状など疑わしいものが見られた場合、すぐに病院へ行きましょう。
エリテマトーデスの症状・治療・合併症
エリテマトーデスとは
エリテマトーデスとは、SLE、全身性エリテマトーデスとも言われ、遺伝的な素因を持つ人に、日光やウイルス、ホルモンなどの様々な刺激が加わることにより発症します。
それらの刺激により、体の中で自分の組織や臓器を攻撃する抗体(自己抗体)が作られ、全身のあらゆる臓器に病変が見られる病気です。
エリテマトーデスの症状
エリテマトーデスの症状には様々なものがあります。特に、皮膚症状や関節症状は多くの症例にみられます。皮膚症状には、顔に両頬から鼻にかけて蝶のような形の皮疹ができる蝶形紅斑や、顔や指の関節などに円形で中心がやや白い皮疹ができる円板状紅斑があります。
エリテマトーデスは紫外線により発症することがあるので、海水浴をした次の日に発症する人もみられます。いつもの日焼けと症状が違う場合、エリテマトーデスを疑いましょう。関節症状には関節炎があります。リウマチとは違い、関節が変形することはありません。
そのほかの症状として、発熱、体重減少、けいれん、幻覚、躁鬱状態、脱毛、漿膜炎、腎炎、肺炎、脳血管障害、赤血球・白血球・血小板の減少などがあります。
特に腎炎と脳血管障害はエリテマトーデスの死因の上位を占めているので、これらの症状がでる前に早期発見し、治療を開始することが大切です。
エリテマトーデスの治療
発熱や皮膚症状、関節症状によりエリテマトーデスを疑った場合、皮膚科または膠原病科を受診しましょう。エリテマトーデスは、症状により軽症・中等症・重症に分類されます。それぞれの段階に合った治療をしていきますが、基本的にはステロイドによる治療になります。
ステロイドが効かない場合、重篤な副作用がみられた場合などは、アザチオプリンやシクロフォスファミドなどの免疫抑制剤を用いる治療に変更します。
エリテマトーデスエリテマトーデスの患者さんは感染症にかかりやすいという特徴がありますが、ステロイドには免疫を抑制する作用もあります。つまり、エリテマトーデスの患者さんでステロイドを大量に服用している患者さんは感染症になる傾向があり、それが原因で死亡することもあります。
そのため、重症の患者さんにステロイドを大量に投与する必要がある場合は、入院治療になります。また、薬剤によってエリテマトーデスに類似する症状を示す人もいます。エリテマトーデスとは違い、自己抗体はみられません。この場合は原因となる薬剤を中止し、経過をみます。
エリテマトーデスの合併症
エリテマトーデスの重篤な合併症にループス腎炎があります。エリテマトーデスの患者さんの50~60%に発症し、クラスⅠ~Ⅵに分類されます。ループス腎炎は悪化すると蛋白尿や血尿を呈するネフローゼ症候群を発症し、さらに悪化すると腎不全を発症します。
腎不全を合併している患者さんは合併していない患者さんより死亡率が高まります。なので、早い段階で治療を開始していく必要があります。また、エリテマトーデスの患者さんの20~40%に合併する病気に、抗リン脂質抗体症候群というものがあります。
抗リン脂質抗体症候群とは、リン脂質に対する抗体により、血液が固まりやすくなり、脳梗塞・心筋梗塞、習慣流産や子宮内胎児死亡などを引き起こします。どちらの合併症もエリテマトーデスの治療を基本に、それぞれの症状に合う治療をしていきます。
最後に
エリテマトーデスは若い女性に起こりやすい病気です。皮膚症状や脱毛などの目に見える症状や、腎不全になった場合の定期的な透析は、患者さんの日常生活に影響を及ぼします。しかし、今はステロイド治療により死亡率は格段に減り、5年生存率は90%になります。
決して悲観する病気ではありません。エリテマトーデスの確定診断のために最初に行う検査は血液検査なので、侵襲性も低いです。なので、少しでもエリテマトーデスを疑うことがあれば、恐れずに皮膚科・膠原病科を受診しましょう。
まとめ
エリテマトーデスの症状・治療・合併症
エリテマトーデスとは
エリテマトーデスの症状
エリテマトーデスの治療
エリテマトーデスの合併症
最後に