「エイズになったら必ず死ぬとは昔の話?自分の命は自分で守る(前編)」では、エイズとはどのような疾患であるのか詳しくご説明いたしました。後編では、エイズの現状や検査方法をご紹介いたします。
もし エイズになったら と怖がらず、HIV抗体検査を受け早期治療にのぞみましょう。
エイズになったら必ず死ぬとは昔の話?自分の命は自分で守る(後編)
エイズの現状とは?
国連合同エイズ計画(UNAIDS)は2015年度の世界のエイズ情報で「36,700,000人がHIVとともに生きています。2,100,000人が新たにHIVに感染しています。1,500,000人がエイズに関連する原因により死亡しています。」と報告しています。
しかしそれでも医学の進歩により、世界的にみると少しずつ新しいHIV感染者は減りつつあり、2013年度には2001年と比較すると38%も減少し、HIV感染者での死亡者も2005年から35%も減少しているという結果が出ています。
一方でそういった背景でも、残念ながら北アフリカ、中東、東欧、中央アジアでは未だ感染者が増加しているという事実もあるのです。2016年8月付けでエイズ動向委員会から出されたデータによると、日本でも新たにHIV感染者がここ10年くらいでは毎年1,400人前後の数の人たちがいます。
しかしこれはあくまでも調査報告上の人数であって、自身で疑いをもっていても「もし本当に自分がエイズになったら」と恐怖のあまり真実を知ることに目をつぶって検査に行かなかったり、HIV感染者特有の症状というものがないために感染に気付かないで過ごしている人も多くいると予想されています。
ではどのような状況下でHIV感染するのでしょうか。
世界的にみてHIV感染経路として、性別を超えた恋愛による関わりの結果、感染をもたらせてしまうというケースが7割以上を占めています。
次いで感染経路として割合の高いものが母子感染や注射針の共用や輸血などがあげられます。
母子感染とはHIV感染した母親から生まれた子どもへの感染や母乳をあたえることによる感染を指します。貧困国や発展途上国では粉ミルクの手配や継続的な購入は難しく、また粉ミルクを作るための清潔な水の準備さえも厳しい状況下にあります。
そのためHIV感染した母親がその状況下で栄養事情からやむを得ず母乳をあたえることで子どもへの感染のリスクを高めてしまっているということになるのです。
また注射器による麻薬が蔓延している国ではHIV感染者と未感染者が注射器を共用することで感染を広げてしまうという状況があります。そしてHIV感染者の血液が未感染者の血中内に入ることで9割以上が感染のリスクを背負うと言われています。
先進国での輸血に使われる血液は感染を高める要因となる細胞を加熱処理することで血液製剤による感染リスクはほとんどないに等しいと言われています。
しかし貧困国や発展途上国は病院をはじめとした治療環境がきちんと設立していないだけでなく、輸血に使用される血液も先進国のような安全性はないために血液による感染リスクを高めてしまっているという実状があります。
エイズの疑いをもったら?HIV抗体検査とは?
エイズ動向委員会の報告によると、保健所におけるHIV抗体検査件数は平成14年には全国で49,429件だったものが、もっともピークだった平成20年には146,880件でした。
その後年々10万件前後とピーク時と比較するとかなり減少したものの、激減するまでの推移を示していないことも確かです。またHIV抗体検査の受診数が減少したからと言って、単純にHIV感染者が減少したという結果に結びつくものではありません。
HIV抗体検査は病院や保健所でおこなっています。まず陽性か陰性かを振り分けるために血液によるスクリーニング検査をします。陰性結果の場合は確実に陰性ですが陽性と出た場合、結果の精度を高めるために、次に抗体検査や遺伝子検査といった確認検査がおこなわれます。
スクリーニング検査では偽陽性の結果が出る場合もあるため、真の陽性なのか偽陽性なのかを見極めるために、このつぎにおこなわれる確認検査が非常に重要になります。最終的に確認検査でも陽性と出た場合HIV感染が認められることになります。
もしHIV感染が認められた場合、感染したウイルス量を抑え、低下する免疫力を回復し続けることを目的とした抗HIV薬の投薬を続けることになります。
近年では2錠から3錠の抗HIV薬を飲む治療法が一般的になっていますが、HIV抗体は消えることはないため、一度飲み始めると一生飲み続ける必要があります。
また副作用が出ることもあります。薬を飲むことを忘れたり故意にやめたりすることで、ウイルスが耐性を作ってしまい、治療を難しくさせてしまう可能性も出てしまいます。そのため治療を続けるためには強い覚悟と忍耐が必要となるのです。
こういったことから「もしエイズになったら」ということ以前に、HIV感染経路を認識し、少しでも感染の疑いを持った上で初期症状ともいえる数々の病状が出た場合はできる限り早期に抗体検査を受けることがエイズ発症を抑えあなた自身の命をつなげることとなるのです。
まとめ
エイズになったら必ず死ぬとは昔の話?自分の命は自分で守る(後編)
エイズの実状とは?
エイズの疑いをもったら?HIV抗体検査とは?