「伝染性単核球症再発を疑う、過去のEBウイルス感染(前編)」では、思春期以降にEBウイルスに感染することにより伝染性単核球症を発症するメカニズムについてご説明いたしました。
後編では、EBウイルスに感染するとなぜ異型リンパ球が増加するのか、また 伝染性単核球症再発 についてご説明いたします。
伝染性単核球症再発を疑う、過去のEBウイルス感染(後編)
なぜ異型リンパ球が増加するのか
リンパ球というのは、私たちの血液中の白血球の一種であり、主に免疫に関わる免疫細胞です。
体の中に病原体を含む異物が侵入すると、それに反応してリンパ球は増加し、他の免疫細胞であるマクロファージなどと協力して、異物の除去や再び侵入してきたときにすぐ対応できるよう抗体をつくるなど活動が活発になります。
そのため、何らかのウイルス感染をおこしていると白血球やリンパ球は増加します。
しかし、EBウイルスはリンパ球のうちB細胞に感染し、免疫機能を失ったB細胞を排除するためにT細胞が活発化し増殖します。そのため、通常の増加とは違い、形態に異常のある異型リンパ球が増加するのです。
この異型リンパ球の増加は、伝染性単核球症を確定診断するための重要な診断材料であり、血液検査で簡単に発見することができます。その後、伝染性単核球症に伴う症状に加え、EBウイルス抗体が検出されると伝染性単核球症であることが確定されます。
発症や再発が疑われる場合の対処法
伝染性単核球症の原因である、EBウイルスは感染力の弱いウイルスであり、多少の飛沫程度では感染することは少なく、すでにEBウイルスに感染し終身免疫を獲得している人は、症状がないままウイルスを排出しているため、それほど注意する必要はありません。また、重症例であっても自然治癒し、予後も良好な疾患です。
そのため、熱が続いても水分が摂れて、自宅で安静にできる場合はそのまま様子を見てもかまいません。しかし、喉の痛みや高熱が続いてつらいときには、解熱鎮痛剤を処方してもらうことにより、多少楽になるでしょう。
また、食事も摂れない場合には、入院を勧められることもありますが、特別な治療をするわけではなく食事で摂取できない栄養を点滴などで補い、数日から1週間程度で食事が摂れるようになれば退院できます。
万が一、症状がなかなか良くならず、体力的にも衰弱していくほどの悪化がみられる場合には抗ウイルス薬を使用することもあります。
しかし、いくら予後良好な疾患であっても症状が続いていると心配になります。過去に伝染性単核球症を発症したことがある方は、本当に再発として片付けてよいものなのかも不安だと思います。
伝染性単核球症は血液検査をしないと確定診断できないことや、高熱が続く他の疾患である可能性も考えられるため、いつもの風邪症状とは違うと思ったときは、早めに医療機関を受診して血液検査をしてみることをおすすめします。
まとめ
伝染性単核球症再発を疑う、過去のEBウイルス感染(後編)
なぜ異型リンパ球が増加するのか
感染が疑われる場合の対処法