チョコレート嚢胞は子宮内膜症の病状の代表的なものです。それ自体に痛みを感じることはあまりありません。ですが、チョコレート嚢胞の厄介なところは周囲の臓器と強い癒着を起こす頻度が非常に高く、それにより強い痛みが出たり不妊の原因になることです。今回は、 チョコレート嚢胞 の 手術 についてご紹介します。
チョコレート嚢胞の手術について
チョコレート嚢胞とは
チョコレート嚢胞とは子宮内膜症が卵巣にできたものです。子宮内膜症は骨盤内臓器の様々な部位にできますが、卵巣に出来ることが非常に多く、特に卵巣の奥や裏側に出来る頻度もかなり高いのです。
卵巣の奥にできた子宮内膜症が出血をしてもその出口がないために出血した血液がたまっていき、その結果として嚢腫(嚢胞)ができます。月経のたびに溜まって古くなった血液=嚢胞の内容物は、茶色くドロドロとしたものになります。
この内容物があたかも溶かしたチョコレートのようであることから「チョコレート嚢胞」と呼ばれます。チョコレート嚢胞は周囲臓器との癒着を起こし、強い月経痛や腰痛などの痛みを生じたり、不妊の原因となったりします。
ですから、チョコレート嚢胞がある場合には、できるだけ手術によって切除してしまうことが望ましいのです。
チョコレート嚢胞は強い痛みを生む
卵巣そのものに痛みを感じることはあまりありません。しかしながらチョコレート嚢胞が原因で強い生理痛や下腹部痛、腰痛や排便痛を生じることがあります。
痛みを生じる原因のひとつが周囲臓器との癒着です。嚢胞は月経のたびに出血を繰り返しますので、癒着は少しずつ強まっていきそれに伴って痛みの程度も範囲も強く広くなっていきます。
もうひとつの原因が嚢胞の破裂です。内容物が溜まっていくと自然に破裂してしまうことがあります。嚢胞が破裂すると周囲に内容物の血液がばらまかれ、これが腹膜を刺激し激しい腹痛を起こすのです。嚢胞破裂が起きた場合は緊急手術が必要となります。
適した手術方法
チョコレート嚢胞の切除には、できるだけ腹腔鏡手術が望ましいとされています。嚢胞破裂など、緊急性の高い手術は開腹手術で行われることがありますがそれ以外では腹腔鏡手術が一般的です。
その理由として、腹腔鏡手術は出血が少なく、切開部分も小さいために術後の癒着がほとんどない術式なので、不妊治療目的での嚢胞切除の場合には特に腹腔鏡手術の利点を活かすことができるということからです。
対して開腹手術は安全性は高いものの、術後の癒着が起こりやすく、不妊の原因を生み出してしまう可能性が高いために出来るだけ避けるべきとの見解の医師が多いのです。
腹腔鏡手術のメリット
腹腔鏡手術は、開腹することなく手術ができるために患者の負担が非常に軽い術式です。手術中には全身麻酔を使いますが、術後の痛みはほとんどなく痛み止めが必要となる患者もごくまれで、術後は翌日には自力で歩行が出来るようになり、3日目には退院となることがほとんです。
退院後はすぐに手術前の生活に戻ることもできますし、肉体労働でなければすぐに仕事に復帰することも出来ます。入院日数も3日程度ととても短く済むために入院費用も15万程度ほどの病院が多く、開腹手術と比較すると経済的な負担も軽く済みます。
さらに手術による癒着がほとんどおきませんので、妊娠を望む場合の妊娠率が高まります。他にも手術跡がほとんど目立たない、出血が非常に少ないなど、非常に多くの利点があります。
腹腔鏡手術のデメリット
いいことずくめの腹腔鏡手術ですが、デメリットもあります。一番は、すべての症例に適応できる術式ではないということです。緊急性の高い手術の場合や嚢胞が悪性の場合、摘出する嚢胞が大きい場合は腹腔鏡手術では対応できないこともあります。
また、お腹の中に挿入したカメラや器具を操作しながら処置をするため手術としての難易度は高く、術者に高い技術と経験を要する術式でもあります。そのために、まれではありますが腹腔鏡手術による合併症のリスクもゼロではありません。
しかし、メリットを上回るだけの利点が腹腔鏡手術にはあります。そのため、チョコレート嚢胞に対しての手術は腹腔鏡手術が一般的となっており、今後もますます普及していくものと思われます。
まとめ
チョコレート嚢胞の手術について
チョコレート嚢胞とは
チョコレート嚢胞は強い痛みを生む
適した手術方法
腹腔鏡手術のメリット
腹腔鏡手術のデメリット