ビダール苔癬 (たいせん)は女性に多く、首やわき、ふとももの内側、陰部などに湿疹病変を生じ、特に首の後ろ側によく出ます。慢性の経過をとり、かゆみがあることがほとんどです。
原因として衣服との摩擦やネックレスによるアレルギー性接触性皮膚炎などの慢性的な刺激が想定されています。病変がある部位や外観で診断されますが、アトピー性皮膚炎やスギによる皮膚炎などと区別を必要とする場合があります。
女性に多いビダール苔癬をご存知ですか?
ビダール苔癬とはどんな病気?
ビダール苔癬(たいせん)は首、わき、ふとももの内側、陰部などに湿疹病変を生じる病気で、限局性神経皮膚炎(げんきょくせいひふえん)と呼ばれることもある皮膚科の疾患です。慢性の経過をとり、数ヶ月から数年に及ぶことも珍しくありません。
病変は特に首の後ろ側によく出現し、ほとんどの場合かゆみをともないます。苔癬というのは複数の赤い丘疹(ブツブツ)が集まった後に、その領域全体がゴワゴワと盛り上がったようになる病変のことで、正確には“苔癬化”と言います。
苔癬(化)はビダール苔癬に限ったものではなく、例えば扁平苔癬(へんぺいたいせん)などの病気があります。“盛り上がり”といってもごく軽度で、こぶのようになるわけではありません。
盛り上がった部分、すなわち苔癬化した領域は赤くなっている場合や、褐色などの色素が沈着しているケース、逆に色素が抜けて白っぽくなっていることなどがあります。
大きさはさまざまですが、たまごの大きさくらいにまで拡大することもあります。これは余談ですが、“ビダール”はフランス人の皮膚科医の名前です。
ビダール苔癬の原因
ビダール苔癬は中年以降の女性によく認める病気です。ただし若い女性に起こることもあるので注意してください。
ビダール苔癬の原因は不明な点も多いのですが、何らかの慢性的な刺激によると考えられています。
この“慢性的な刺激”は個人によってさまざまであり、衣服(下着も含む)との摩擦など機械的な刺激、ネックレスや衣類の素材あるいはシャンプー・リンスのすすぎ不足などによるアレルギー性接触性皮膚炎、さらには汗をかくことで衣服との摩擦が強まることによる刺激などが想定されています。
これらの原因を考えると、最初に記したビダール苔癬が生じやすい部位が納得できるのではないでしょか。
また首やわきなどは皮膚に細かいしわができ、体を動かした際に皮膚同士が摩擦し刺激を受けやすい部位でもあります。さらにいったん苔癬化して盛り上がった病変は、いっそう摩擦などの刺激を受けやすくなるものと考えられています。
ビダール苔癬の診断
ビダール苔癬の診断の決め手となる検査は存在せず、基本的には臨床像、すなわち病変のある場所とその外観で診断されることがほとんどです。ただし検査を行う必要がある場合もます。
首に湿疹を繰り返す場合、特に女性では上述したようにネックレスなどのアクセサリーが原因となって慢性の接触性皮膚炎を生じ、その結果ビダール苔癬に進行しているケースがあります。
このような場合では金属類のアレルギーを検査するパッチテストという検査が有用です。パッチテストは衣類の染料やゴムなどのアレルギーが疑われた場合に行われることもあります。
ビダール苔癬とまぎらわしい病気
ビダール苔癬と病変が似ている皮膚疾患がいくつか存在し、区別する必要があります。
まずアトピー性皮膚炎があります。アトピー性皮膚炎は慢性的に湿疹病変を生じる病気であり、その結果苔癬化することがあります。首だけを観察した場合、首に生じたアトピー苔癬をビダール苔癬と間違えてしまう危険があります。
アトピー性皮膚炎ではひじの内側などほかの部位にも湿疹病変が見られること、皮膚の乾燥が広い範囲で生じていること、血液検査でIgE(アイ・ジー・イー。imuunoglobulin E)が高値となることが多いこと、他のアレルギー性疾患を合併することがあることなどがビダール苔癬と見分けるヒントになります。
次にスギによる皮膚炎があげられます。スギ花粉に対してアレルギーがある人に、2月から4月ごろに飛散した花粉が付着し、首やまぶたなど皮膚が比較的薄くて傷がつきやすい部分を中心として花粉のタンパクが皮内に浸透し、湿疹病変を発症します。
時として苔癬化することがあり、首にできた苔癬化病変はビダール苔癬と似ています。花粉と関連するために毎年同じ時期に病変が出ることや血液検査でスギに特異的なIgEが高値となることで、区別することが可能です。
また詳しくは書きませんが、股に生じた白癬(はくせん)や陰部に発症したカンジダ症がビダール苔癬のような病変を形成する場合があります。
これらの病気であった場合、治療法が大きく変わる場合があります。ビダール苔癬かな?と思っても、自分で判断せず、一度は皮膚科を受診することをおすすめします。
まとめ
女性に多いビダール苔癬をご存知ですか?
ビダール苔癬とはどんな病気?
ビダール苔癬の原因
ビダール苔癬の診断
ビダール苔癬とまぎらわしい病気