食事の栄養素は消化管を移動しながら吸収され、その残りカスは便として排泄されます。しかし、排便がスムーズにおこなわれず便が腸管内に長期間滞ってしまうと便秘となり、硬くなった便を排泄することが困難になります。
便秘は下痢に比べて軽視されやすく、そのままにしてしまいがちです。しかし、 便秘 は糞便性イレウスや大腸がんなどの病気を招き、最悪の場合 死亡 する危険もあるのです。
便秘が死亡リスクのある病気を招く(前編)
- 目次 -
便が出る仕組み
口から食べた食べ物は、7~9mにもおよぶ一本の長い消化管を通り、それぞれの過程で必要な栄養素を消化、吸収しながら移動し肛門から排泄されます。そのほとんどは、小腸が占めており、総面積はテニスコート一面ほどの広さに相当する中でゆっくりと栄養素を吸収していきます。
そして、その残りカスが大腸に入ると水分を吸収しながらのの字を書くように上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸の順に移動します。
このとき、大腸の中では蠕動運動によって便が運ばれ、便が直腸にたどりつくと直腸壁が引き伸ばされることにより直腸にかかる圧を感知し、脊髄神経を通って脳に情報が伝えられます。脳からの指令で便意を感じると、私たちはトイレに行き、便を出すための環境を整えます。
環境が整うと同時に、脳は肛門の内側にある内肛門括約筋を緩める指令を出し、私たちも意識的に肛門の外側にある外肛門括約筋を緩ませて便を排泄します。
このような長い道のりを経て、食べたものは24時間~72時間かけて便として排泄されます。そして、大腸と脳の連動によって、私たちはトイレに行けないときには便を我慢して、環境が整ったら排泄するという調整ができるのです。
便秘が続くと腸が詰まる
トイレに行くまで便を我慢することは、私たちが生活する上でなくてはならない仕組みです。しかし、それを重ねることにより便が出なくなってしまうこともあります。
便の成分は80%ほどが水分であり、適度な硬さがあるため排泄しやすいのです。しかし、便意を感じてもすぐに排泄されないと、便は大腸内で滞り少しずつ水分が吸収されます。
また、便意は10~15分程度で治ってしまい、その後は再び便意がおこるまで排泄されずに大腸に留まります。水分が吸収された便は硬くなるため、排泄しづらくなってしまったり、排泄されても肛門に傷をつけて痔になってしまうのです。
便意があってもそのタイミングで排泄できない状況を続けていると、次第に直腸の感覚が鈍くなって脳に情報を伝えなくなったり、脳からの指令も出にくくなり便秘になります。
慢性的に便秘が続くと、大腸に長期間滞った便によって腸管が塞がれてしまいます。そして、その手前の消化器が行き場をなくすことにより、吐き気や腹部膨満感、激しい腹痛などの症状があらわれます。この状態を糞便性イレウスといいます。
糞便性イレウスがさらに悪化すると、大腸の便が腐敗し腸内細菌が増殖し、毒素を出すようになります。その毒素が血液中に入り込むと敗血症という大変危険な状態になり、最悪の場合死亡する可能性もあるのです。
まとめ
便秘が死亡リスクのある病気を招く(前編)
便が出る仕組み
便秘が続くと腸が詰まる