鮮血 便 は血便の1種で、鮮やかな赤い血が便に混じる、もしくはほぼ単独で血液が肛門から出る症状です。鮮血便と便潜血とは異なるので注意が必要です。
鮮血便のよくある原因は痔ですが、下部消化管出血、すなわち大腸憩室出血や虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、O157などの細菌性腸炎が原因となっているケースもあります。痔と自己判断せずに医療機関を受診することが必要です。
鮮血便が出たらすぐ病院へ!原因が痔とは限りません。
鮮血便とは
鮮血便(せんけつべん)は血便の1種で、文字通り鮮やかな赤い血が便に混じる、もしくはほぼ単独で血液が肛門から出る症状です。
血便には鮮血便の他に黒色便(こくしょくべん)と呼ばれる赤黒い、もしくは炭のように真っ黒な便(したがって黒色便はタール便とも呼ばれています)が出るタイプもあります。
血液が消化管(食道、胃や腸)あるいは痔から出血すると下血が起きますが、出血した血液は時間がたつと酸化するために黒色に変化します。したがって理論的には鮮血便は出血後短時間で肛門から出ている、すなわち肛門に近い部位から出血していることを意味しています。
具体的には痔や大腸・直腸の病気(下部消化管出血と呼ばれます)が原因となります。
そして黒色便は理論的には肛門から遠い消化管、例えば胃や十二指腸からの出血(これらをまとめて上部消化管出血と言います)で生じます。わざわざ“理論的には”と記した理由は、実際の医療現場では必ずしもあてはまらない場合が少なくないからです。
上部消化管出血における黒色便の感度(上部消化管出血を起こしている人のうちで黒色便があった人の割合)は70~80%、特異度(黒色便があった人のなかで実際に上部消化管出血を生じていた人の割合)は80~90%とされています。100%ではないことに注意が必要です。
便潜血と間違えないでください
鮮血便とまぎわらしい言葉に便潜血(べんせんけつ)があります。便潜血は見た目でははっきりしない程度の血液が便に混じっている状態、すなわちごく小量の血液が便に混じっている状態を意味します。健康診断や人間ドックで行う検便はこの便潜血をチェックする検査です。
読み方は同じでも意味するところは大きく異なりますので、とくにネットで検索する際には“鮮”血便と便“潜”血を間違えないように注意して入力してください。
鮮血便のよくある原因は痔ですが・・・・
痔は鮮血便の原因として有名で、実際によくあります。痔であった場合の多くは、排便時に肛門周囲に痛みをともないます。
ただし、肛門周囲に痛みがあるから痔による鮮血便と自己判断することはとても危険です。痔以外の病気(上述の下部消化管出血など)でも肛門周囲に痛みをともなう場合があるからです。
また日本人ではいわゆる“痔もち”の人が多いために、痔もあるが同時に下部消化管出血もある、というケースも十分ありえます。
出血量(ティッシュや下着に少し血液が付着する程度のものや便器が血で真っ赤になるほど多い場合など)、回数(1度だけの場合や何回も出る場合)、腹痛や下痢の有無は人によってさまざまですが、これらで痔かそれ以外の原因による出血かを区別することはできません。
つまり、ほんの少量が1回だけ出た鮮血便であっても、痔以外の危険な病気を生じている可能性があります。反対に腹痛が全くないから下部消化管出血ではないとも言うことはできません。特に初めて鮮血便が出た場合には、たとえ腹痛がなくても必ずすぐに医療機関を受診してください。
下部消化管出血の原因
それでは下部消化管出血を生じる病気にはどのようなものがあるのでしょうか。
もっとも多い病気は大腸憩室出血(だいちょうけいしつしゅっけつ)で、高齢者に多く、痛みをともなわずに鮮血便が出現することが典型的です。
高齢者では他に虚血性大腸炎や大腸がん、直腸がんなどが原因となることもあります。比較的若い人に生じる病気が潰瘍性大腸炎で、炎症性腸疾患(えんしょうせいちょうしっかん)と呼ばれる病気の1つです。10歳代後半から30歳代前半の若年者に好発します。
年齢を問わず起こりえるのが、細菌感染による腸炎です。O157(オー・イチ・ゴー・ナナ)などの病原性大腸菌、赤痢アメーバ、赤痢菌、カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオなどの病原体が原因となります。
特に海外から帰国して日が浅い人、生肉や生焼けの肉を食べた人、周囲にも同じような症状がいる人では念頭に置く必要があります。
これら下部消化管出血をきたす病気では入院を要することも少なくありません。なお他にも下部消化管出血を起こす疾患は存在しますが、字数の関係で割愛させていただきます。
まとめ
鮮血便が出たらすぐ病院へ!原因が痔とは限りません。
鮮血便とは
便潜血と間違えないでください
鮮血便のよくある原因は痔ですが・・・・
下部消化管出血の原因