甲状腺を常に刺激する バセドウ病 には、一般的に投薬治療を最初に行います。しかし薬で甲状腺の数値が安定するまでには非常に個人差があり、数十年薬を飲み続けるケースも珍しくありません。薬には副作用があり、肝臓の数値が悪くなくると命に関わるので、投薬治療を止めなければいけない場合もあります。
また甲状腺腫(腫れ)が大き過ぎて薬では治りにくい、バセドウ病に悪性腫瘍が合併しているなどでも、選択されることが多いでしょう。
仕事や環境でどうしても短期の改善を望む場合、治療の選択として 手術 という方法もあります。体力を要する仕事(スポーツ)や、近い将来妊娠を希望しているなど、本人の希望で手術を希望する場合は、医師と相談し行われます。
このように手術は本人の希望と、手術が適切であるか医師の判断との合意で施されます。では、その手術の内容とはどのようなものなのでしょう。
バセドウ病の手術って、どんな時にするの?
バセドウ病の手術って、何をするの?
過剰な甲状腺ホルモンが出ないよう組織を摘出するのが手術の目的です。甲状腺のある喉の部分を切開し甲状腺組織を摘出しますが、手術にはいくつか種類があります。甲状腺組織を2グラム以上残すのが亜全摘術、0〜2グラム残すのを準全摘術、甲状腺全てを摘出するのを甲状腺全摘術といいます。
従来は亜全摘術がほとんどでしたが、これは残した甲状腺組織が正常に戻る働きを期待してのことでした。しかし術後に甲状腺機能が正常になる割合が約半数で、術後に正常になったとしても甲状腺の機能が変化し、2年後には15%、5年後20%も再発していました。これではせっかく手術しても再発の可能性がかなり高く、最悪再手術の可能性もありました。
最近の傾向としては、甲状腺全摘術を選択するのが主流になっています。特に将来妊娠を考えている女性には甲状腺全摘術が行われます。妊娠中にバセドウ病が悪化した場合、胎児にも影響を及ぼし、胎児の甲状腺までも刺激されることになります。そうなることを避ける為にも、再発しない甲状腺全摘術を選択した方が母子ともにメリットがあります。
この甲状腺全敵術を行うことにより、甲状腺機能低下で一生薬を飲むことになりますが、副作用の少ない安全な薬です。妊娠中、授乳中は薬を飲むことに不安を覚えるかもしれませんが、胎児への影響はほとんどなく、飲まないことのデメリットの方が問題になります。このようにバセドウ病の手術や治療をすることで、女性は健康な人と同じように妊娠し、出産、子育てをすることができます。
手術をする時って、どれくらい入院するの?金額は?
検査や術後の経過を合わせると、バセドウ病の手術の入院は約一週間が平均です。術後は翌日から歩行も可能ですし、病院によってはシャワーも許可されます。術後3・4日で抜糸をし、経過観察後、合併症もなく安定していれば7日目には退院できます。
手術費の平均は、1割負担で約7万円、3割負担で約20万円です。しかしバセドウ病は症状の個人差が大きく、重病の難しい手術は45万円を超えることもあります。
バセドウ病の手術のリスクってあるの?
バセドウ病の手術は全身麻酔で、安定した状態で行いますので大きなトラブルは少ないでしょう。ただバセドウ病だけでなく、手術には100%安全なものはなく、リスクは必ずあります。バセドウ病の手術のリスクとしていくつかの例をあげてみましょう。
喉の近くを切開する手術ですので、術後声のかすれる人がたまにみられます。しかし声に関しては3ヶ月ほどで戻ることが多く、問題のない範囲といえます。
甲状腺の横には大きな血管が通っています。甲状腺の摘出の際に血管の損傷で出血することがあります。またリンパ管も近くにあり、術後にリンパ液などが漏れ出すこともあります。しかし出血もリンパ管も極稀な例ですし、対処できない病院はありません。経過観察により、いずれも大きな問題に発展することはないでしょう。
手術をした喉の違和感を覚える方も多いでしょう。術後は喉に関わらずどの部分でも初めは違和感があります。しかしこれも半年や一年で解消されることがほとんどです。
バセドウ病の手術はその患者数からも現在多くの方が受けており、また日々進化しています。手術となると不安の大きくなる方もいると思いますが、信頼のできる医師に相談し、治療の選択の一つに考えてみてはいかがでしょう。
まとめ
バセドウ病の手術って、どんな時にするの?
バセドウ病の手術って、何をするの?
手術をする時って、どれくらい入院するの?金額は?
バセドウ病の手術のリスクってあるの?