バセドウ病 は甲状腺ホルモンが過剰になることで、身体が常にマラソンをしている状態にあるような疾患です。これは青年期、壮年期に好発しやすく、女性患者が多いものの誰にでも罹患する可能性があります。
薬 の内服により多くの場合治療することができます。症状を理解し、適切な治療を受けましょう。
バセドウ病について知り、正しく薬を服用しましょう
バセドウ病とは
バセドウ病は別名グレーブス病とも言われ、20~40歳代の女性に好発する自己免疫疾患です。女性の患者数は男性に比べ4~5倍となっています。免疫は通常、外敵が体内に侵入した際に攻撃することにより、健康を保つ仕組みのことをいいます。
しかし、この自己免疫疾患においては何らかの原因によって、自分自身の体を敵と認識し攻撃してしまう状態にあります。バセドウ病は甲状腺を異常に刺激する物質が体のどこかで作られ、この異常な刺激によって甲状腺ホルモンの分泌が過剰となり、甲状腺機能が亢進する疾患です。
主な治療法は薬物療法、放射線療法、手術療法の3種です。基本的には薬物治療から開始し、効果が認められない場合や薬物治療による副作用が強い場合に放射線療法や手術が適応となります。手術では甲状腺の全摘出が行われます。
また、妊娠中の場合、母体のバセドウ病の放置により妊娠高血圧症、低出生体重児、流産・早産・死産のリスクが高まり、胎児・新生児の甲状腺異常の発現に関与するため、妊娠中も適切な治療を継続することが重要となります。
甲状腺ホルモンの主な役割
甲状腺ホルモンは全身の臓器に作用します。エネルギーを作り出したり、代謝が促進されます。また、循環器系を亢進させ、心収縮力や心拍数を増加させる作用もあります。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌された場合、身体は常にマラソンをしている時のような状態となります。さらには、身体や脳の発育にも甲状腺ホルモンが関与しています。
バセドウ病の症状
甲状腺ホルモンは全身に働きかけるため、それが過剰になることで全身の臓器に様々な症状をもたらします。びまん性甲状腺腫、眼球突出、頻脈はバセドウ病の主な3徴候です。
それ以外の症状としては体重減少または体重増加、動悸、息切れ、多汗、食欲増加、手足の振え、全身倦怠感などが現れます。甲状腺ホルモンには骨の代謝を促す作用もあるため、過剰になることで骨のカルシウムが急激に失われ、骨量が低下し骨粗鬆症が引き起こされることもあります。
バセドウ病の治療薬
主に薬物治療に用いられる薬剤は、甲状腺ホルモンを生成を抑制させる作用を持つ薬剤で、メルカゾール、チウラジール、プロパジールが処方されます。通常、治療開始時期は1日3~4回内服し、その後状態を見て1日1~2回の内服になります。
薬剤の効果発現までには4~6週間程度かかります。これは、すでに生成されている甲状腺ホルモンが4週間分ほど蓄積されているためです。また、症状が改善し、甲状腺の機能が正常化してもしばらくの間は服用を継続する必要があります。
これら薬剤の注意すべき副作用として、無顆粒球症、白血球減少症があり、喉の痛みや38℃以上の高熱、全身のだるさなどの症状が出た場合はすぐに医療機関を受診するようにしてください。この副作用は、服用開始1~3ヶ月後に出現する可能性があります。
その他にも気になる症状が出た場合は主治医に相談してください。また、バセドウ病の症状である頻脈、動悸、振戦などがある場合に対して、インデラル、ソラシロールなどが用いられます。
甲状腺機能の回復を急ぐ場合やバセドウ病の手術前などには、効果は短期間しか期待できませんが、即効性があり副作用がほとんどないヨウ化カリウムが用いられることもあります。
妊娠の有無により第一選択となる薬剤が異なるため、妊娠の可能性がある場合は必ず主治医に伝えてください。
バセドウ病の予後
バセドウ病は症状によっては、疲れからくるものかな、更年期障害の症状かな、体質が変わったのかな、と分かりづらいものもあり、受診が遅れたり、場合によっては診察で見逃される可能性もゼロではありません。
発見が遅れたり、治療を怠り、症状が進行すると生活に支障が出たり、更には命に関わることもあります。しかし、きちんと適切な治療を行えばバセドウ病の予後は良好といえます。
薬剤による治療は、症状が改善してもしばらくは根気強く飲み続けなければなりませんが、きちんと服用できれば服用を中止しても正常な状態を保つことができるようになります。自分の身体が少しいつもと違うと感じた時は、医療機関を受診し、症状をきちんと伝えるようにしましょう。
まとめ
バセドウ病について知り、正しく薬を服用しましょう
バセドウ病とは
甲状腺ホルモンの主な役割
バセドウ病の症状
バセドウ病の治療薬
バセドウ病の予後