完治 とは治療を一切必要としなくなる状態をいいますが、バセドウ病 の完治率は全体の約3割といわれ、これは非常に少ない数字です。
バセドウ病を完治した患者の中でも治療期間にはかなり個人差があり、治療の種類も病状により様々です。完治せず一生薬を飲む患者も多いのですが、バセドウ病の治療のゴールを完治だけではなく、違う方向に設定することにより完治の概念が変わってくると思われます。
バセドウ病は決して治らない病気ではなく、適切な治療で確実に改善に向かいます。バセドウ病の完治とは何なのか、その治療法について考えてみましょう。
バセドウ病って完治するの?
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投薬治療の期間と完治
検査の結果バセドウ病と診断された場合、先ずは投薬治療からスタートするのが一般的でしょう。甲状腺の数値を健康な状態に近づける薬を処方し、短くて数ヶ月、長くて数年間服用します。投薬治療での完治率は甲状腺や抗体が大きな場合は約30%、小さい場合は70%とかなり個人差の大きい数字になっています。
投薬治療中は定期的に甲状腺の数値を検査し、薬の量を変えていきます。治療中にも関わらず数値が変化し、当初の計画通りに治療期間が終わらない場合も多く、特に女性は年齢や環境に影響されます。
投薬治療の一番のリスクは内臓への副作用です。バセドウ病の薬の種類は少なく、肝臓のダメージが大きくなると投薬治療の継続が難しくなり、他の治療法や手術へ変更します。
このように投薬治療では期間や完治の個人差が大きく、また治療を始めてからの治療計画変更などのリスクもあります。
放射線治療
放射性ヨードの入ったカプセルを内服し、そのヨードが甲状腺に集まって放射線を出す治療です。食事でヨードを摂らないなどの制限はありますが、カプセルを飲むだけの簡単な治療です。しかし結果が出るまで数ヶ月を必要とし、治療後に甲状腺機能低下症になる人がいます。治療後に甲状腺機能が低下する報告もあり、放射性ヨードでのバセドウ病完治率は約半分といわれています。甲状腺機能が低下した場合、甲状腺ホルモンの薬を一生飲む可能性も出てきますが、低下症の薬自体は副作用が少なく安全です。
しかし放射線なので妊娠中や授乳中はこの治療はできません。またこの治療後1年間妊娠は避けるなど、特に若い女性にとっては時期を選ばなくてはいけない治療です。放射線というと髪の毛が抜けるイメージがありますが、髪の毛への影響は全くありません。
手術
手術にはいくつか種類がありますが、以前は病状により甲状腺細胞を2%残す亜全敵術を多く行っていました。これは残した甲状腺が正常な働きをすることを目的としていましたが、亜全敵術では再発率が高く、半数以上の患者が術後に再発していました。術後に甲状腺の数値が安定した患者でも数年で再発することがあり、3年後には約15%、5年後には約20%の患者がバセドウ病を再発していました。
現在では甲状腺を全て摘出する甲状腺全敵術が増えています。甲状腺を摘出するとホルモンの分泌や免疫に影響は出ますが、投薬治療で普通の生活を送ることができます。この手術のデメリットは一生薬を飲まなければいけないことで、つまり完治は望めないということにはなります。しかし普通の生活を送る事を目的とする場合は一番短期間で改善が望め、再発により何度も手術することはありません。手術自体は経過観察を含め一週間程の入院で済み、多くの方が手術を受けています。
このように様々な治療法により、バセドウ病は改善します。個人の病状や、どこをゴールと決めるかにより完治の概念は変わってくるのかもしれません。ただどの治療法もバセドウ病との長いお付き合いを必要としますので、信頼出来る医師と連携し、リスクを理解した上で治療の計画を進める事が大切になってきます。
まとめ
バセドウ病って完治するの?
投薬治療の期間と完治
放射線治療
手術