「上手なお酒の飲み方がアルコール依存症と病気を防ぐ(前編)」では、アルコールと脳内物質の関係性についてご説明いたしました。後編では、 アルコール依存症 とはどのような状態をあらわすのか、また健康的にお酒を飲む方法についてご紹介いたします。
上手なお酒の飲み方がアルコール依存症と病気を防ぐ(後編)
体は耐性をつくり依存度を高める
飲酒によりドーパミンの分泌は促されますが、これは最初の20分程度であるといわれています。そのため、多量に飲酒をしてもドーパミンの分泌が増え続けるというわけではありません。
さらにアルコール成分は脳の細胞を損傷させ、回復を妨げるといわれています。そのため、適度な量の飲酒に抑えることが必要です。
また、体は反復してアルコールの刺激を受けることにより、その変化に適応し耐性ができます。そのため、習慣的に飲酒することにより、刺激を受けて分泌されるドーパミンの量が低下します。
しかし、ストレスから開放されたり、快感を得られることを知っている体は、飲酒に対する依存度を高めて再び快感を得ようとします。この悪循環により、飲酒量は次第に増え、やめることができなくなるアルコール依存症に陥るのです。
このようなアルコールがもたらす効果は、依存性のある麻薬や覚せい剤などと同様であることから、アルコールも依存性薬物の一種であるといわれています。
アルコールが体に与える影響
アルコールの影響は脳だけではなく、密接な関係がある肝臓にも悪影響を及ぼします。アルコールは胃と小腸から吸収され、肝臓で代謝・分解されます。
このとき、肝臓の細胞は多少の傷害を受けますが、再生能力が高いため体内のアルコールが尿や汗、呼気として排泄された後、正常の状態に戻ることができます。
しかし、大量のアルコールを習慣的に摂取していると、細胞が正常に戻ることができなくなり、炎症をおこしたり、破壊されて繊維化しアルコール性肝繊維症を招き、肝臓の機能を低下させてしまいます。
また、肝臓は脂肪を蓄えて代謝させる機能がありますが、アルコールの代謝・分解を優先しておこなうことによりアルコール性脂肪肝を招きます。
このようなアルコールによる肝障害によって、傷害を受け続けると肝臓の繊維化が進み、肝臓全体が硬くなる肝硬変へと進行し、放置すると命にも関わる重大な病気を発症してしまう危険もあります。
その他にも、大量の飲酒は腎臓やすい臓などさまざまな臓器に悪影響を与え、がんの原因になることもあります。
健康的なお酒の上手な飲み方
アルコールは体に悪影響を及ぼし、アルコール依存症にもなりかねません。しかし、私たちが社会生活をする上で、会社の付き合いであったり、自分自身のストレス発散や楽しみとして飲酒をする機会は多くあります。そのため、健康的に上手にお酒を飲む方法を知ることが大切です。
体に悪影響を及ぼさない適量には個人差があります。また、同じ人でもその日の体調によって変化します。そのため、一概にはいえませんが、約20グラム程度のアルコール量が健康的で適度な量といわれています。酔いの状態であらわすと、ほろ酔い程度になります。
たとえば、瓶ビールでは中瓶1本、日本酒は1合、ワインは1/4本、缶チューハイは1本と1/2缶になります。しかし、すべての人に当てはまるわけではありませんので、お酒に弱い人、小柄な人は少なめに考えるとよいでしょう。
また、お酒は他の食物と異なり、消化されることなく、胃や小腸から吸収されるため、空腹の状態ではお酒が胃に留まることなく小腸に流れます。小腸は胃よりもアルコールの吸収が早いため、急激に血中アルコール濃度が高くなってしまい急性アルコール中毒を引き起こす危険があります。
そのため、食事やおつまみと一緒に飲むことにより、アルコールの吸収を緩やかにし健康的な飲酒をすることができます。
その他、週に2日は休肝日をつくり肝細胞が正常な状態に戻れるようしっかり休ませ、普段から肝臓に負担をかけすぎない適度な飲酒量を心がけることも大切です。
まとめ
上手なお酒の飲み方がアルコール依存症と病気を防ぐ(後編)
体は耐性をつくり依存度を高める
アルコールが体に与える影響
健康的なお酒の上手な飲み方