全身性エリテマトーデス は全身性という病名の通り、頭から足先まで全身の皮膚や臓器に影響を及ぼす可能性がある自己免疫疾患です。現れる症状は多く、検査で見つかる自己抗体が多彩であることが特徴です。
様々な症状が一度に現れたり、悪化と寛解を繰り返しながら慢性的な経過をたどっていきます。また、この病気の男女比は1:10で明らかに女性の方が多く、女性にしかできない 妊娠 にも影響を与えてしまいます。
全身性エリテマトーデスに必要な妊娠管理(前編)
なぜ女性に多い病気なのか
全身性エリテマトーデスの原因は、まだよく分かっていません。しかし、最近になり遺伝的な要因が関係していることが分かり、そこに感染症や紫外線、薬剤などの外的要因が加わることによって免疫のバランスが崩れ、発症するのではないかといわれています。
また、全身性エリテマトーデス以外の膠原病も女性に多い傾向があり、女性ホルモンが関係していると考えられています。女性ホルモンは免疫機能を高める働きがあり、それによって自己抗体の働きが活発になるため症状が現れると考えられます。
妊娠への問題
女性ホルモンは黄体ホルモンと卵胞ホルモンの2種類があり、それぞれ妊娠に大きく関係しています。卵胞ホルモンは女性らしい身体をつくり、妊娠前の子宮内膜を厚くして準備をします。
黄体ホルモンは受精卵が着床しやすくし、その後妊娠を継続させます。このように、出産まで2つのホルモンが作用して妊娠の継続と出産の準備をしていきます。
女性ホルモンが関係していると考えられる全身性エリテマトーデスは、妊娠に伴い作用が強くなるこの2つの女性ホルモンにより症状を悪化させてしまう可能性があります。
妊娠すると血液の量、血圧、ホルモンのバランスなど身体の中で様々なものが変化し、身体に問題のない女性でも負担が大きくなります。
つわりで苦しむ人、疲れやすくなる人、妊娠によって起こる妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群、また切迫早産などによって入院や安静が必要になることもあります。
このように女性の身体に負担がかかる妊娠中に全身性エリテマトーデスの症状が悪化した場合、母体を守るために妊娠の継続が困難になることもあります。
妊娠は難しいのか
全身性エリテマトーデスは妊娠が難しい病気ではなく、妊娠の管理が難しい病気です。妊娠して、出産するというその過程で問題が起きないようにしなければならず、場合によっては妊娠の継続が困難になります。
妊娠の継続が困難になるのは大きく分けて3通りあります。
母体は順調だが胎児が順調ではない
この原因は、もちろん通常の妊娠でもあり得ますが、全身性エリテマトーデスの場合は抗リン脂質抗体症候群という合併症が原因となることがあります。
これは静脈、動脈に血栓ができやすくなるため胎児へ栄養や酸素を供給する胎盤の血管に血栓ができることで、栄養や酸素が不足してしまいます。それによって流産や死産となってしまいます。
胎児は順調だが、母体が順調ではない
妊娠は身体に大きな負担がかかります。全身性エリテマトーデスの合併症や症状が出現したり、妊娠に関係する合併症によって母体の状態が悪くなると、基本的には母体の治療が優先されます。
しかし、妊娠中に使用できる薬剤にも限界があり、状態が落ち着かない場合は胎児の成長を見ながら、早期出産させることになります。十分な期間を母胎内で過ごせなかったことで、各種機能の発達が未熟であり出生後に問題が出てくることも考えられます。
母体、胎児共に順調ではない
このような場合は、残念ながら母体を優先した人工的流産や、帝王切開で強制的に出産させ母体を守ります。その結果、母体には合併症が残り、胎児は生存することができずに死亡するという最悪の事態もあり得ます。
後編では、安全な妊娠をするためにどうするべきなのかご紹介致します。
まとめ
全身性エリテマトーデスに必要な妊娠管理(前編)
なぜ女性に多い病気なのか
妊娠への問題
妊娠は難しいのか