今、不妊治療の現場で、若い女性の排卵障害の原因として取り上げられることの多い多嚢胞性卵巣症候群という病気をご存知でしょうか。卵胞がある程度までしか発育せず、無排卵や稀発排卵になると言われている 多嚢胞性卵巣症候群 の 原因 についてご紹介いたします。
原因から考える多嚢胞性卵巣症候群の対処法と予防法
多嚢胞性卵巣症候群とは
多嚢胞性卵巣症候群は英語のpolycystic ovary syndomeを略してPCOS(ピーコス)と呼ばれることがあります。毎月起こるはずの排卵が何らかの理由で行われない状態を排卵障害と言いますが、若い女性の排卵障害の原因として、患者数が多いことがよく知られています。
日本産科婦人科学会はエコー画像で多嚢胞性卵巣を確認し、血液検査で男性ホルモンが多く、月経異常がある場合を多嚢胞性卵巣症候群の診断基準としています。
重症度には非常に個人差があって、エコー画像では多嚢胞性卵巣をしめしていても順調に排卵をしている場合もあれば、無排卵になっている場合もあると言います。
多嚢胞性卵巣症候群の原因
多嚢胞性卵巣症候群の原因は現在のところはっきりと解明されていませんが、主に以下に述べる2つが原因として考えられています。
ホルモン異常
ご存知のように各種のホルモンは脳の下垂体という部位の指令によって分泌されています。卵巣の中の卵胞の発育を促すLH(黄体形成ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)も脳の視床下部や下垂体の働きによって分泌されるのです。
何らかの理由によって視床下部や下垂体に異常が発生するとアンドロゲンという男性ホルモンが過剰につくられてしまい、その結果、FSHよりLHの分泌が多くなってしまいます。その結果として卵胞はある程度以上育たなくなってしまうと考えられています。
脂肪組織の機能異常
膵臓から分泌されるインスリンは血中の糖の濃度を調節する働きをしています。ところが、肥満傾向の方はアディポサイトカインという物質が異常に分泌されることがあって、インスリンに対する抵抗性をもってしまう場合があります。
その結果として、血中の糖の濃度が上がってしまい、ホルモン分泌異常と同じようにアンドロゲンという男性ホルモンを過剰に分泌するようになってしまいます。これが、月経異常や排卵障害の原因になっていると考えられています。
上述の2つの原因に共通しているのは多嚢胞性卵巣症候群の原因が卵巣内のアンドロゲン濃度の上昇であるという考え方です。
多嚢胞性卵巣症候群の診断
多嚢胞性卵巣症候群は血液中のホルモン検査やホルモン負荷試験、卵巣の超音波検査で診断されます。ホルモン検査ではLHがFSHより多くなるという顕著な特徴が出ます。しばしば男性ホルモンも増加がみられます。
超音波検査では卵巣に普通より多い数の卵胞を確認することができます。昨今では腹腔鏡下手術によって卵巣のごく一部を切り取って顕微鏡下で検査をするようなこともできるようになってきました。
さしあたって妊娠の希望がない場合には、カウフマン療法と呼ばれるホルモン療法や低用量ピルなどのホルモン剤を用いて、月経を周期的に起こす治療が施されます。
多嚢胞性卵巣をもつ女性の70%は排卵障害を起こすと言われています。そのために不妊になることもあるので、妊娠を望む場合には排卵誘発剤などを用いて治療が行われます。
多嚢胞性卵巣症候群の診断を受けたら
多嚢胞性卵巣症候群という診断を受けてもそのほとんどは軽度なものが多いと言われています。特に妊娠を望んで妊活中の方はきちんと検査を受けた上で治療が必要であることは言うまでもありませんが、過度に心配する必要はないと言われています。
上述したように、肥満による体脂肪や糖の代謝がこの病気に関わってきていることがわかってきましたので、適正体重の維持や過度な糖分摂取を慎むことなどに留意する必要はあるでしょう。
また、脳の視床下部や下垂体は非常にストレスに弱い部位だということができます。病気について過度に心配することも含めて、ストレスの排除に努めてください。自分なりのストレス解消法を試してみるのもよいでしょう。
まとめ
原因から考える多嚢胞性卵巣症候群の対処法と予防法
多嚢胞性卵巣症候群とは
多嚢胞性卵巣症候群の原因
多嚢胞性卵巣症候群の診断
多嚢胞性卵巣症候群の診断を受けたら