妊娠 や出産をきっかけに骨盤内臓器脱になる人は案外多く、約半数が 子宮脱 等の骨盤内臓器脱に悩むといわれています。
妊娠出産はそれだけ子宮やその周囲にある臓器や骨盤底筋に強い負担がかかるものなのです。予防する方法や子宮脱になってしまった時の対処についてまとめました。
妊娠で子宮脱に? 妊娠と子宮脱の関係性
子宮脱は骨盤内臓器脱のひとつ
女性の骨盤内に収まっている臓器は膀胱、子宮、直腸があります。それらの臓器は通常は骨盤内で収まるように下からハンモック状の骨盤底筋群という筋肉で支えられています。
ところが何らかの原因によって骨盤底筋群の下から支える力が弱くなると、臓器が重力に逆らえずに下にさがってきます。
最初は腹腔内で下垂した状態ですが、状態が悪化すると膣から体外に飛び出した状態になります。これが骨盤内臓器脱といわれるものです。そのうち子宮が膣から体外に飛び出している状態のものを子宮脱と呼びます。
骨盤底筋群が痛む主な理由は出産
女性の臓器を正しい位置に支える骨盤底筋群ですが、機能が弱ってしまう原因はいろいろです。一番は出産時のいきみや、排便の際に日常的に強いいきみを続けることです。非常に強い負荷が骨盤底筋群にかかり筋繊維が傷んでしまうのです。
同じように、妊娠によって大きく重くなっていく子宮を長期間支え続けているうちに機能が弱くなってしまうことも原因のひとつです。また3人以上の多産、3,500グラム以上の大きな赤ちゃんの出産、高齢出産も骨盤底筋群が痛みやすく、通常の出産よりもさらに子宮脱のリスクが高いといえます。
出産以外の骨盤底筋群に負担のかかる要因としては肥満や加齢による筋力低下もありますが、上記のように妊娠や出産をきっかけに子宮脱になる人は非常に多く、出産と子宮脱の因果関係があることは否定できません。
妊娠中に子宮脱になったら?
妊娠中に子宮下垂(子宮の位置が低くなる、進行すると子宮脱になる)や子宮脱になる人もいます。妊娠中の子宮下垂や子宮脱は子宮口が開きやすい、細菌感染のリスクが高いことから流産や早産の危険性が高まります。
妊娠初期から中期にかけて子宮脱が見つかった場合には感染予防のために膣洗浄をしたり、管理入院をしたりして流産や早産のリスクを軽減します。
また経膣分娩に耐えうる状態にないと医師が判断することもあります。母子の安全を優先して予定帝王切開での出産も視野に入れておく必要があります。
いずれにしても子宮下垂や子宮脱との診断があるときには極力腹圧がかからないように配慮しながらゆったりと安静に過ごす必要があります。
産後子宮脱に気づいたら
初期の子宮下垂の状態のときには自覚症状はほとんどないといわれていますが、症状が進行し子宮脱の状態になると体外に飛び出した粘膜の部分が下着に擦れて痛みや炎症を起こしたり、排尿障害・排便障害といった不快な症状がでてきます。
放っておいても改善するものではないため、医師の診察が必要となります。下半身の異変に気づいたら恥ずかしがらずに病院へ受診しましょう。
自分でできるセルフケアとしては、弱くなった骨盤手筋群を鍛え、機能を回復させる産褥体操をする、妊娠出産によって乱れているホルモンバランスを整えるように食事に気を付け、規則正しい生活を心がけるといったことが考えられます。
子宮脱を予防する「産褥体操」
産後の傷んで緩んでしまった骨盤や骨盤底筋群の機能の回復を促す「産褥体操」や骨盤ベルトの使用が子宮脱の予防にもなります。お産の影響は時間のたった更年期の頃に突如影響が出たりすることもあるようなので気をつけたいものですね。
また、妊娠出産経験の有無に関わらず、全ての女性におススメしたいのが骨盤底筋を鍛える簡単な体操です。
膣や肛門をきゅっと引き締め上に引き上げるイメージで息を吸いながら力を入れていきます。息を吸いきったところで5秒間静止してからゆっくりと息を吐きながら力を抜いていきます。これを1回10セット、1日2~3回ほど気がついたときにしておくだけで将来の子宮脱予防になります。
テレビを見ながら、家事をしながらの「ながら体操」でも効果ありですのでぜひ生活に取り入れてみてください。
まとめ
妊娠で子宮脱に?妊娠と子宮脱の関係性
子宮脱は骨盤内臓器脱のひとつ
骨盤底筋群が痛む主な理由は出産
妊娠中に子宮脱になったら?
産後子宮脱に気づいたら
子宮脱を予防する「産褥体操」