私たちの体は、一つ一つの細胞が幾重にも重なり約60兆個もの細胞で構成されています。古くなった細胞は新しいものへ代わり、損傷した細胞は再生することによって、それぞれの機能を維持しています。それがおこなえなくなるのが病気です。
現在、機能を失った細胞を幹細胞によって再生させたり、幹細胞からつくられた臓器を移植することにより病気を根本的に治療する 再生医療 を目指し、研究が進められています。
失った機能を取り戻すための再生医療(前編)
細胞の異常が病気の原因
これまでの生活の中で、ほとんどの方が何らかの病気にかかったことがあると思います。
それは、風邪などのようにウイルスや細菌を体の中から排除してしまうことにより治るものもあれば、心臓や肺、腎臓など生きていく上で必要不可欠な機能を持つ臓器や組織に損傷を与えてしまい、本来の正常な機能を失ってしまうような病気の場合もあるでしょう。
このような臓器や組織を細かく見ていくと、どれも小さな一つの細胞であり、それが形を変えながら幾重にも重なって大きな器官を形成しています。細胞にも寿命があり、古くなり機能を失うと次から次へ新たな細胞へと盛んに代謝がおこなわれます。
もしも、細胞を攻撃し破壊する敵があらわれたとしても、敵を攻撃して細胞を守る機能を持つ他の細胞があり、破壊された細胞はまた再生や代謝によって正常の状態を取り戻すことができるため、常に与えられた機能を発揮することができます。
このように、私たちの体の中では細胞レベルでの異常が起きても、自らの力で再生し治すことができるのです。
しかし、再生や代謝がおこなえず、細胞が減ったり異常に増殖したり、全く違う細胞に置き換わってしまうことにより、本来の正常な機能を失ってしまうと、その細胞の集合体である臓器や組織の機能も乱されてしまいます。これが私たちの体に病気としてあらわれるのです。
多くの命を救えるようになった現在の医療技術
医療の進歩により、以前は治すことが不可能だった病気も治すことができる時代になりました。
内科的治療では、薬を使って異常な細胞を破壊し、正常な働きを取り戻せるよう細胞を活性化させたり、外科的治療により異常な細胞を除去するといった症状や病気に合わせた治療がおこなわれています。
そのため、私たちは大変な病気にかかってしまっても、適切な治療を受けることにより命を落とすことなく、また元の生活を取り戻すことができるのです。
しかし、さまざま医療技術を駆使しても残念ながら治すことができなかったり、元の生活を取り戻すことができない病気もあります。その場合におこなわれる医療技術の一つが、機能を失った部分を正常な他者のものと入れ替える臓器移植です。
現在、最も移植希望者が多い腎臓をはじめ、肝臓や心臓、肺などのさまざま臓器の移植がおこなえるようになりました。
しかし、他者の臓器が体内に入ることにより、異物が侵入したと判断して攻撃してしまう拒絶反応や、提供者に対して移植希望者があまりにも多く、移植できないまま命を落としてしまう方も少なくありません。
まとめ
失った機能を取り戻すための再生医療(前編)
細胞の異常が病気の原因
多くの命を救えるようになった現在の医療技術