卵巣囊腫 はそれと診断されても即手術が決まる病気ではありません。良性の嚢腫であり、かつ無症状または日常生活に支障がなかったりする場合には経過観察となることがほとんどです。ですが、手術を行う場合には 腹腔鏡手術 での嚢腫摘出となることが多いのです。
卵巣嚢腫には腹腔鏡手術が向いている理由
手術が必要な卵巣囊腫
卵巣囊腫はそのほとんどが良性です。無症状や無自覚であることも大変多い病気です。ですが一部は悪性(がん)であることもあり、その場合には手術による嚢腫の切除が必要となります。
また、不妊の原因であることが多く、妊娠を望む場合は手術は積極的に手術が行われます。他には、チョコレート嚢腫の場合は非常に強い痛みを引き起こし、日常生活に支障をきたすほどの状態になることも多いために手術が必要になります。
卵巣囊腫の手術の方法としては、お腹を大きく切って行う開腹手術と、お腹の中に腹腔鏡や鉗子を入れて行う腹腔鏡手術の2つがありますが、近年は患者の負担軽減効果の大きい腹腔鏡手術が非常に増えてきています。
腹腔鏡手術は患者の負担が少ない
腹腔鏡手術の最大のメリットは患者の心身の負担の軽減です。お腹を大きく切ることなく手術が出来る方法なので術後の回復が早く、かつ痛みも少なくて済みます。手術の翌日には自分で歩くことが出来るようになり、手術後3日目で退院となるケースがほとんどです。
入院期間も短期間で済むために入院費用も少なく済みます。退院後すぐに軽い家事から始めることができますし、肉体労働でなければ仕事に復帰することも可能です。
手術の負担で最も心配なのは「痛み」ですが、腹腔鏡手術後の傷の痛みというのはほとんどありません。これは痛みを感じる皮膚や腹膜の傷が非常に小さくて済むからです。
腹腔鏡手術のメリット
患者の負担軽減の他にもメリットがあります。手術後の癒着が非常に少ないことと、妊娠率の高さです。
癒着とは、組織が傷つき出血したときに傷口を塞いで組織の回復を図るという体が本来持っている機能です。腹腔鏡手術では出血量がほとんどないためにこの癒着が非常に起きにくい術式といわれています。
また、卵巣囊腫が不妊の原因である場合はその癒着が理由です。そのため腹腔鏡手術後の妊娠率が非常に高いというデータもあります。良い面ばかりではなく、デメリット(リスク)もありますが、リスクをはるかに上回る利点があるといわれているのが腹腔鏡手術です。
腹腔鏡手術では適応できない場合
開腹手術と比較すると、利点が非常に大きい腹腔鏡手術ですが、残念ながら万能ではありません。腹腔鏡手術では適応できない卵巣嚢腫もあります。
例えば、卵巣囊腫が悪性(がん)であった場合です。悪性の手術は、処置の際にお腹の中でがん細胞を綺麗に切除しきることと、周囲にまき散らさないよう慎重に処置する必要があるのですが、腹腔鏡手術は術野の狭さから充分な処置が出来るとはいえないのです。
また子宮筋腫などの全摘術や、大きくなりすぎた卵巣囊腫の場合は切除した後に体外に取り出すのが困難な場合があります。さらに、子宮や卵巣の周りに強い癒着がある場合は、その癒着を剥離してからでないと手術することができません。これらの場合は開腹手術での適応となります。
腹腔鏡手術は信頼できる専門医の元で行う
腹腔鏡手術には、高い技術と豊富な経験を要します。産婦人科医なら誰でも良いという訳ではなく、医師にもそれぞれ得意・不得意分野があるため、腹腔鏡手術を得意とした信頼できる専門医を選ぶようにしましょう。
まとめ
卵巣囊腫には腹腔鏡手術が向いている理由
手術が必要な卵巣囊腫
腹腔鏡手術は患者の負担が少ない
腹腔鏡手術のメリット
腹腔鏡手術では適応できない場合
腹腔鏡手術は信頼できる専門医の元で行う