卵巣は女性にしかない臓器であり、その卵巣に発生するさまざまな卵巣腫瘍は女性特有の疾患です。卵巣腫瘍は初期症状がほとんどなく、健診や腫瘍が大きくなってからあらわれる症状によって発見されることも少なくありません。
そのため、腫瘍が悪性の 卵巣癌 であった場合、発見されたときにはかなり進行しており、死亡する確立の高い癌でもあります。このような特徴からサイレントキラーと呼ばれることもあります。
早期発見が難しい、女性だけが発症する卵巣癌(前編)
卵巣にできるさまざまな腫瘍
女性のみに存在する卵巣では、エストロゲンとプロゲステロンという女性にとって重要な働きをする2つの女性ホルモンが分泌されています。その卵巣は、他の臓器に比べてできる腫瘍の種類が多い特徴があり、それぞれの原因も異なります。
腫瘍が発生する原因や腫瘍の発生する組織によって、表層上皮性・間質性腫瘍、胚細胞腫瘍、性索間質性腫瘍の3つに分類され、さらに性質によって良性腫瘍、境界悪性腫瘍、悪性腫瘍の3つにわけられます。
表層上皮性・間質性腫瘍は卵巣腫瘍の中で最も多くみられるものであり、表面の上皮に発生し子宮内膜症性が原因でおこる卵巣のう腫がこの一種です。
次に多いのが胚細胞腫瘍です。胚細胞というのは、胎児期にさまざまな形に分化して、私たちの身体を構成する細胞であり、卵巣の中ではいずれ卵となる細胞です。他の2つに比べて、青年期や若年の女性に多くみられ、片側の卵巣に発生するという特徴があります。
性索間質性腫瘍は成熟する前の卵胞や黄体に発生するため、ホルモン産性能を有する場合があり、20~30代の若い女性に発生するものはアンドロゲンを産生することにより男性化徴候があらわれ、閉経前後に好発するものはエストロゲンを産生することにより若返ったような症状がみられるという特徴があります。
このように、卵巣内に発生する腫瘍は、発生源や発生場所によってさまざまな種類がありますが、それらは悪性腫瘍である場合よりも、良性腫瘍であることの方が多いといわれています。
症状があらわれにくいサイレンとキラー
卵巣癌は、初期にあらわれる自覚症状が非常に乏しいため、発見された段階では既に40~50%がステージⅢ、Ⅳまで進行していることも多く、サイレントキラーと呼ばれ、死亡率の高い癌です。
しかし、乳癌のように死亡率を下げられるという有効性が証明されていないため、自治体などが実施している集団での健診はおこなわれていません。そのため、妊娠したときやその他の理由で婦人科健診を受けた際に偶然発見されることが多いといわれています。
また、卵巣にできる腫瘍は良性、悪性に関係なく症状が乏いだけでなく、腫瘍が良性であるのか悪性であるのかを判別したり、癌の進行具合を予測するために有効とされる腫瘍マーカーを調べても初期には陰性であることが多く、血液検査だけでは正確に診断することができません。
そのため、手術によって腫瘍を摘出してから病理検査した結果、悪性腫瘍だと判明することも少なくありません。このようなサイレントキラーの特徴が卵巣癌の発見を遅らせ、死亡率を高めてしまうのです。
まとめ
期発見が難しい、女性だけが発症する卵巣癌(前編)
卵巣にできるさまざまな腫瘍
症状があらわれにくいサイレントキラー