乳房にしこりがあると、まずは乳癌を疑うと思いますが、乳房にできるしこりは良性である場合がほとんどです。その中のひとつに、分泌物が溜まり外からしこりのように触れる乳腺嚢胞があります。 乳腺嚢胞 ができるのは生理的現象であり、それが 原因 で乳がんを発症することはありません。
しかし、嚢胞のなかに分泌物以外のものがみられる場合は、がん細胞が潜んでいる可能性も考えられるため精密検査をうける必要があります。
乳がん発症の原因にはならない乳腺嚢胞(前編)
女性にとって大切な乳腺の役割とは
女性の乳房は、主に乳腺組織とそれを守る脂肪組織で構成されています。思春期を迎えると、卵巣から女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が高まり、その作用により乳腺組織が成熟しはじめます。
成熟した乳腺組織は、月経の周期に伴って発達し、妊娠が成立するともうひとつの女性ホルモンであるプロゲステロンの作用も加わり、さらに乳腺組織を発達させます。そして、脳の下垂体から分泌されるプロラクチンの作用を受けて乳汁をつくりはじめます。
しかし、妊娠中には乳汁が必要ないため、プロラクチンの作用はプロゲステロンによって抑制されています。
そして、出産を迎えるとプロゲステロンの分泌が低下し、抑制されていたプロラクチンの作用が高まることにより、乳汁の生成と分泌が増加し、赤ちゃんが乳頭を吸う刺激に伴って分泌されます。
この赤ちゃんの成長に必要な乳汁を生成し、分泌しているのが乳腺組織なのです。乳腺組織をさらに細かく見ると、乳汁を生成する腺細胞は嚢状の腺房となり、それが10~100個ほど集まってぶどうの房のような小葉を形成しています。
ひとつの小葉からは1本の乳管が出ており、20~40個ほどが集まって1本の主乳管となり、乳頭に開口しています。
この1本の主乳管からつながる乳管や小葉などの組織のことを合わせて乳腺といい、ホルモンの影響を受けながら妊娠、出産に向けて発達し、赤ちゃんに栄養のある乳汁を与えるという大切な役割を果たしているのです。
やわらかいしこりの正体
乳房にしこりが触れると、誰もが乳がんを疑い心配になると思います。しかし、乳房にできるしこりが全てがんとは限りません。
乳房にできるがんのほとんどは、乳腺内でがん細胞が増殖し塊となっている悪性の腫瘍です。しかし、乳腺にはがん細胞を含まない良性の腫瘍ができることがあります。
乳房にできる良性腫瘍はいくつか種類がありますが、その中でも40~50代くらいの女性の半数以上にみられる乳腺嚢胞というものがあります。乳腺嚢胞は、乳管内に分泌物が溜まり袋状に膨らんだものであり、丸くやわらかいしこりとして触れることがあります。
嚢胞が小さいうちは痛みや分泌物が出ることはなく、自覚症状がないため検診などの際に発見されることが多いです。
乳腺嚢胞ができるはっきりとした原因はまだわかっていませんが、これらは年齢に伴う生理的変化が主な原因であり、女性ホルモンが影響していると考えられています。
まとめ
乳がん発症の原因にはならない乳腺嚢胞(前編)
女性にとって大切な乳腺の役割とは
やわらかいしこりの正体