乳癌予防のためのセルフチェックをしている時、また下着をつける際に何かしこりに触れると、もしかしたら乳癌かもしれないと心配になるかと思います。
確かに、そのような異変を感じて受診することにより乳癌が発見されることもあります。しかし、 乳癌 ではなく 良性 の しこり である場合もあるのです。
乳癌と間違えやすい良性のしこり(前編)
乳房のしくみ
私たちの身体にはさまざまな器官があります。乳房は、出産後に乳汁をつくり分泌するための皮膚の付属器官なのです。乳房の中には、他の器官と同様に神経、血管が走っており、周囲には脂肪組織があります。
乳房が他の器官と違う点は、乳汁をつくるための乳腺という腺組織があるということです。
乳腺は腺葉という10~15程度の組織に分かれており、それぞれが枝分かれして小葉という組織になり、そこには乳汁をつくるための腺房が集まっています。腺葉には乳汁を外へ分泌するための乳管が1本ずつあり、乳頭部近くでまとまり、最終的には主乳管になります。
出産後にはホルモンの刺激を受け、これらの乳腺組織が活発に働くことにより乳汁が生成されます。その際、ゴツゴツとした乳腺を触れることがありますが、普段は脂肪組織が触れしこりのようなものに触れることはありません。
乳癌ができる部位
乳癌といっても、癌が発生する部位によって種類はたくさんあります。癌は血液の癌と固形の癌に分けられ、固形の癌はさらに上皮細胞癌と非上皮細胞癌に分けられるように癌が発生する部位と発生しない部位があるのです。
乳房の中で癌化する可能性のあるのは、乳腺の内側にある上皮細胞です。
上皮細胞がホルモンの刺激を受けたり、細胞の突然変異などの何らかの原因で癌化し、免疫機能によって除去されることなく増殖してしまうと乳癌を発症することになります。
乳房にできる良性のしこり
乳癌の多くは、初期の症状として柔らかい組織の中に米粒大の硬いしこりに触れることで発見されます。しかし、しこりの多くは悪性ではなく良性の場合がほとんどです。
良性のしこりのうち、よくみられるのは乳腺症、繊維腺腫、乳管内乳頭腫、葉状腫瘍です。
乳腺症は良性のしこりの中で最も多く見られますが、これは病気ではなく治療の必要もありません。女性ホルモンのバランスが崩れることにより、乳腺組織の細胞が影響を受け変化します。その変化に伴って現れる張りや痛み、しこりなどの症状の総称を乳腺症といいます。
長い間女性ホルモンの刺激を受け、その度に増殖、萎縮を繰り返します。それにより、組織の中に増殖している部位、萎縮している部位、繊維化している部位が混在するようになってしまいます。
乳腺症でみられるしこりは、月経周期による女性ホルモンの影響で乳腺が硬く触れ、境目が不明瞭であり痛みを伴うものです。
乳腺繊維腺腫は、繊維組織と乳腺が増殖することによって形成される1〜3㎝程度のおはじきのように平たいしこりです。乳腺症のしこりと異なる点は、周囲の組織との境目がはっきりとしていて可動性があるという特徴があり、痛みがないということです。
乳管内乳頭腫は、乳汁が通る乳管の乳頭に近く太い部位に形成される乳頭状のしこりです。血性の分泌物が出ることもあります。乳管内乳頭腫自体が悪性腫瘍になることはありませんが、将来的に乳癌を発症する可能性が高いといわれています。
乳腺葉状腫瘍は、月単位で急成長する腫瘍であり、数ヶ月で10㎝以上の大きさになることもあります。腫瘍はやわらかく、繊維腺腫とよく似た所見があります。
腫瘍の大きさの割にリンパ節転移がないという違いはありますが、画像所見のみでは乳癌との区別が難しく、切除や生検を行い病理検査によって診断する必要があります。
また、乳癌が上皮細胞に形成される腫瘍であるのに対し、乳腺葉状腫瘍は上皮細胞を囲む間質細胞が腫瘍化したものです。
まとめ
乳癌と間違えやすい良性のしこり(前編)
乳房のしくみ
乳癌ができる部位
乳房にできる良性のしこり