自分で乳癌に気づく症状のひとつとして乳腺のしこりに触れるということがあります。ただし、しこりが全て乳癌であるというわけではありません。乳腺にしこりのできる病気には乳腺症・線維腺腫・葉状腫瘍などがあると言われています。
乳腺 の しこり についてご紹介いたします。
乳癌以外にもこんなにある乳腺にしこりのできる病気
乳房のつくり
乳房は乳汁をつくる乳腺と乳汁を運ぶ乳管、それらを支える脂肪から構成されています。乳腺には腺葉とよばれる組織の集まりが15~20個あり、腺葉は乳管と小葉によって構成されています。乳腺で作られた乳汁は乳管を経て、乳管洞という部位に溜められます。
多くの乳癌は乳管から発生する「乳管癌」です。小葉から発生する癌は「小葉癌」と呼ばれています。この他にも乳房には特殊な癌がありますが、その発生頻度は低いと言われています。
乳腺のしこり
乳癌が見つかるきっかけは、マンモグラフィー検診などによるものが多いのですが、腫瘍が大きくなって、自分で触って気づく場合もあります。上述したように、しこりがあっても全てが乳癌であるということではありません。
乳腺症・線維腺腫・葉状腫瘍など乳腺にしこりを作る病気はさまざまです。中でも葉状腫瘍は非常に稀な病気ではありますが、良性の病気である線維腺腫に似たものから、再発や転移を起こす悪性のものまであると言われています。
乳腺にしこりができる乳癌以外の病気
乳腺症
30~40歳代の女性に多い良性の乳腺の変化です。硬結といって、大きさがふぞろいの境界が不明瞭な平らで硬いしこりが片側もしくは両側の乳房にできます。
しこりは何もしなくても痛むか、押すと痛む場合があります。月経前に大きくなって、月経後に縮小し、痛みも月経と連動します。
乳腺症の異常乳頭分泌は水のような漿液性、乳汁様、血性などであるとされています。血清乳頭分泌がある場合は良性疾患である乳管過形成や乳頭腫であることが多いとされていますが、乳癌の可能性が全くないわけではないので、詳しい検査が必要になる場合があります。
乳腺症はエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが関与しているために、卵巣機能が低下する閉経後には自然に症状がなくなります。
一般に月経周期と連動するしこりや痛みは過度に心配する必要がないと言われていますが、月経周期に関係ないしこりを見つけた場合には専門医を受診することをお勧めいたします。
乳腺炎
乳腺炎は乳汁の滞りや細菌感染などによって乳房に炎症が起こる病気です。乳房が赤く腫れて痛み、膿やしこりを作ることがあります。
授乳期には乳房内に乳汁が溜まることによって「うっ滞性乳腺炎」がよくみられます。乳頭から細菌に感染すると「化膿性乳腺炎」になって膿をもつこともあります。授乳期以外の乳腺炎は乳房に溜まった分泌液にリンパ球が反応して起こるのではないかと言われています。
乳腺炎は乳癌の発症と直接的な関係はありません。ただし、痛みがないにもかかわらず乳房が腫れる場合は、炎症性乳癌の可能性が出てきますので、専門医の受診が必要です。
乳腺線維腺腫
10歳代後半~40歳代の女性に多く起こる乳房の良性腫瘍です。触るとコロコロした感じのよく動くしこりです。線維腺腫であるという確定診断が下れば、治療は必要なく、乳癌の発症とも関係がありません。
葉状腫瘍
初期の段階では乳腺線維腺腫と似ていますが、急速に大きくなることが特徴だと言われています。ほとんどの場合良性ですが、転移を起こす可能性の高い悪性のものもあります。
通常は手術によって摘出しますが、葉状腫瘍は腫瘍の部分だけを摘出すると再発することが多いために腫瘍よりも大きめに摘出する必要があると言います。
中には乳房全体が葉状腫瘍に占められるような場合もあって、乳房切除が行われるようなこともあります。葉状腫瘍は乳癌ではありません。
乳癌による乳腺のしこり
典型的な乳癌のしこりは「硬く、石ころのように触れる」と言われていますが、非浸潤乳管癌のような早期癌では、しこりなのかしこりでないのか迷うような硬結である場合があります。
腫瘍が3㎜以上あれば、超音波で見つけることはできますが、しこりを触れることは不可能だと言います。腫瘍が1㎝以上あれば、しこりを自覚できる方があるようです。さらに腫瘍が2㎝以上あれば、たいていの方がしこりを自覚できるようです。
しこりの大きさや硬さではそれが癌であるかどうかの判断はできません。乳癌は体表にできる癌なので、検診で見つかった場合も自分で見つけたⅠ~Ⅱ期の場合でも5年生存率が90%以上と言われています。
少しでも不安なしこりを見つけたら、専門医を受診する姿勢が大切です。
まとめ
乳癌以外にもこんなにある乳腺にしこりのできる病気
乳房のつくり
乳腺のしこり
乳腺にしこりができる乳癌以外の病気
乳癌による乳腺のしこり