癌は周辺の組織に浸潤して広がっていく性質があるものですが、非浸潤性乳管癌はその名の通り、乳管外には浸潤していない、遠隔転移もしていない乳管癌です。
非浸潤性乳管癌 について診断法や治療法も含めてご紹介いたします。
病状と患者の考え方で決める非浸潤性乳管癌の治療法
非浸潤性乳管癌とは
非浸潤性乳管癌は英語の頭文字をとってDCISと表記されることがあります。この頭文字を順番に追っていくように病名をみていくと非浸潤性乳管癌という病気がよくわかると言います。
Ductalとは母乳を作る小葉をつなぐ細い管のことで、この病気が乳管という場所で発生したものであることを示しています。
Carcinomaとは病気が乳管の上皮や内膜に発生した腫瘍であることを意味しています。
in situとは腫瘍が発生した場所に留まっていて他の部分に転移していないことを意味しています。
乳管に正常な細胞が癌化していく過程の細胞の塊があるときに非浸潤性乳管癌と診断されますが、正常な細胞が癌化していく過程には3つの段階があります。
最初の段階は乳房の細胞の遺伝子的な変化から始まります。乳房の細胞の遺伝子的変化が細胞の成長を刺激して乳管の正常な細胞の過剰な増殖を引き起こし、乳管いっぱいにするのが第1段階です。
細胞が変異を始め、顕微鏡下で正常でないことが確認される異形乳管過形成と呼ばれるのが第2段階です。
非浸潤乳管癌とはこの第2段階の状態からさらに細胞の増殖性が強くなって、異常な細胞が乳管に存在するものの乳管内に留まっている第3段階にあたります。
非浸潤性乳管癌診断のための検査
マンモグラフィー
マンモグラフィー検診を受ける女性が増えたことで、非浸潤乳管癌のような乳癌の早期発見のケースが増えてきました。微小石灰化という段階でレントゲン映像に線や塊の状態で映るために癌であることが解るようになったのです。
2005年の統計によれば、非浸潤性乳管癌と診断される方は新規乳癌診断の20%にもなると報告されています。
MRI(磁気共鳴映像法)
非浸潤性乳管癌においてはMRIがマンモグラフィーより優れているという結果は出ていないと言われています。
バイオプシー(生体組織検査法)
最も一般的なバイオプシーの方法は、超音波映像を見ながら、乳房の微小石灰化した部分に太い針か細い吸引チューブを差し込んで、検体となる細胞を採取するというものです。
マンモグラフィーにおいて石灰化が広範囲にわたっていることがわかっている場合には外科生検が勧められます。
病理検査
バイオプシーで採取した細胞の構造と配列を顕微鏡を用いて調べて、正常な細胞とどの程度違っているかを検討します。
採取した細胞がエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモン受容体陽性であるかないかや癌に関する遺伝子の変異の有無についても調べることもあります。
非浸潤性乳管癌の治療
非浸潤性癌は手術で切除することによって完治する可能性が高いので、従来は乳腺の全切除が標準的な手術として行われてきました。昨今は、病変の広がりを正確に診断する技術が進み、乳房温存手術が行えるようなケースが増えてきています。
非浸潤性乳管癌の治療は全乳房切除術、全乳房切除術とホルモン療法、皮下全乳腺切除術と同時再建、皮下全乳腺切除術と同時再建並びにホルモン療法、乳房温存手術と放射線療法、乳房温存手術と放射線療法並びにホルモン療法という6種類の中から選択されることになります。
石灰化している病変が広範囲に広がっている場合には乳房全切除が勧められ、病変が限局している場合には乳房温存の対象となります。乳房温存となった場合にも切除断端の生検の結果によっては追加切除を行うこともあります。
温存手術後には放射線照射を行うことがありますが、病理検査の結果によって医師の判断や患者の希望によって行われない場合もあります。
乳房温存術の10~20%に局所再発がみられ、その半数は浸潤癌だと言われています。再発した場合には全乳房切除術が行われます。
乳房温存術を選択した場合には局所再発を防止するためにタモキシフェン(抗エストロゲン剤)によるホルモン療法が補助療法として行われます。
上述のように非浸潤性乳管癌の治療にはさまざまな選択肢が存在します。患者自身のライフスタイルや考え方も十分に配慮して、担当医とよく話し合って治療方法を選ぶことが大切になってきます。
まとめ
病状と患者の考え方で決める非浸潤性乳管癌の治療法
非浸潤性乳管癌とは
非浸潤性乳管癌診断のための検査
非浸潤性乳管癌の治療