胸痛は狭心症など心疾患の症状としてよくみられるものですが、逆流性食道炎の症状が重い場合にも胸痛がみられることがあると言います。心疾患による胸痛とはどのように違うのでしょうか。
逆流性食道炎 の 症状 としての 胸痛 についてご紹介いたします。
胸焼けだけでなく胸痛もある逆流性食道炎の症状
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎とは強い酸性の胃酸や胃で消化されている途中の内容物などが食道に逆流して、食道が炎症を起こしてしまう病気です。炎症を起こした食道は粘膜がただれるびらんや粘膜や組織の一部がなくなってしまう潰瘍を生じてしまいます。
この食道の炎症のために胸焼けや胸痛などさまざまな症状が出ます。もともとは日本人には少ない病気でしたが、食の欧米化などによって近年患者数が増加してきていると言われています。
なお、胃液や胃の内容物の逆流があって胸焼けがあっても、びらんや潰瘍がないものは非びらん性胃食道逆流症として区別されています。
ご存知のように食物を消化するために胃には非常に強い酸性の胃酸や消化酵素が存在しています。胃の内壁は粘膜によって胃酸から守られていますが、食道は胃酸に対する抵抗力がありません。
そこで、健康なときには胃液が食道に逆流しないようなシステムが働ています。そのシステムのおもな担い手は下部食道括約筋で、噴門部といわれる食道と胃のつなぎ目にある筋肉です。
この下部食道括約筋は食べたものを飲み込むときには緩んで食道から胃に食物が落ちるようにし、それ以外のときは閉めて、胃の内容物が食道に逆流しないように働いています。
また、食道は蠕動運動をしていますので、胃の内容物が逆流してきても胃に戻したり、唾液をのみこんで逆流してきた胃液を薄めたりして、食道が胃液や胃の内容物によって傷つかないようになっています。
逆流性食道炎は何らかの原因で、下部食道括約筋のなどによる逆流防止システムの力が低下するか、増え過ぎた胃酸が逆流して食道に留まることが原因となって起こります。
逆流性食道炎の胸痛
逆流性食道炎では胸焼けの他に酸っぱい液体が口まで上がってくる吞酸、咳、喉の違和感などの症状とともに胸痛を訴える方があります。
定期的にチクチクと針を刺すような痛みを感じる場合やキューと胸を締めつけられるような痛みを感じる場合もあるようです。
上述したように、逆流性食道炎では出過ぎた胃酸が食道に逆流して炎症を起こしていますので、胸焼けがおさまれば、胸の痛みも自然に解消します。ただし、炎症の程度によってその後の胸の痛みや違和感のなくなり方に差が出てきます。
胸焼けなどの症状が長引ていた方は炎症が進んでいると考えられ、胸痛の鎮静にも時間がかかるようです。また、胸焼けが長引いている方はただれた状態になった食道の粘膜がちょっとしたことで反応してしまう傾向があります。
例えば、熱すぎるものや冷たすぎるもの、辛い物など刺激的なものを摂取することで胸痛を引き起こすことがあります。
逆流性食道炎による胸痛は、ある程度炎症が進んで重症化した場合に出る症状だと考えられます。
胸焼けや吞酸など軽度な症状のうちに受診して胃酸抑制剤などを処方してもらうのが賢明です。
狭心症の胸痛との違い
締めつけらえるような胸の痛みを感じると狭心症などの心疾患ではないかと不安を覚える方もあることでしょう。痛みの程度からみると、両者の識別はつきにくいと言われています。
ただし、狭心症の胸痛は１～１０分以内に消失するという大きな違いがあります。
また、胸の中央が痛むことが多い狭心症ですが、放散痛と呼ばれる胃や背中まで広い範囲に痛みが広がったり、喉の痛みや歯が浮く、嘔吐、呼吸困難など逆流性食道炎ではみられない症状があることも特徴的です。
胸痛だけではなく、胸焼けや吞酸、喉の違和感など逆流性食道炎特有の症状を併せもっている場合には、逆流性食道炎による胸痛だと判断してよいでしょう。
注意しなければならないのは、狭心症から心筋梗塞に進行してしまった場合には、安静時であっても強い胸痛や胸を締めつける症状が３０分以上続くことがあることです。
まとめ
胸焼けだけでなく胸痛もある逆流性食道炎の症状
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎の胸痛
狭心症の胸痛との違い