下剤 ダイエット と呼ばれる下剤をダイエット目的で使用する方法が存在します。しかしダイエット目的で下剤を使用すると薬物乱用、さらにそこから進んだ摂食障害、脱水、低ナトリウム血症、耐性などの問題を生じるがことがあります。
精神的な異常をきたす場合や、生命にかかわることすらありえます。絶対にダイエットのために下剤を使うことははやめてください。
ダイエット目的で下剤を使用することは非常に危険です
下剤ダイエット!?
巷にはさまざまなダイエット法が氾濫しており、特にインターネットで検索するとおびただしい種類のダイエット法が紹介されています。その中には医学的に有害であり、とてもおすすめできない(ちなみにこの項を記担当している筆者は内科医です)ダイエット法も少なくありません。
下剤をダイエット目的で使用する“下剤ダイエット”も医師の立場から言わせていただくと、危険すぎであり得ないダイエット法です。
しかしながらネット上には筆者と同じように下剤ダイエットに否定的な意見がある一方で、“〇kgもやせた!”、“食事制限がいらない”、さらには“無理なくやせることができる(?!)”など肯定的な記載も存在します。
この項では下剤ダイエットの危険性について説明します。
薬物乱用
ダイエット目的で下剤を使用して目的が達せられた(=体重が減少した)場合、しばしば下剤を使用し続け、さらにはその使用量が増加する、あるいは複数の下剤を併用するようになる人がいます。医学的に薬物乱用と呼ぶ状態で、睡眠薬や頭痛薬の乱用が有名です。
下剤を乱用するようになると、摂食障害にまで進行する場合すらあります。
摂食障害はいわゆる拒食症(きょしょくしょう)のことで、病的なレベルまでガリガリにやせているにかかわらず、患者さん自身は“ちょうどいいくらいの体重や体型になっている”、あるいは“もっとやせたい”と思う、精神を病んでしまう疾患です。
痛くもかゆくもない病気ですが、おそろしい病気で、栄養失調に至り(文字通り骨と皮だけになります)命を失うことも少なくありません。摂食障害は精神科医と内科医のいずれか、あるいは両者が協力して担当することが多い病気ですが、治療が非常に難しいことが知られています。
その最大の理由は患者さん自身が異常にやせている状態を自分では病気とは思っていないところにあります。そのため治療を受けることを拒否する(栄養失調で入院して点滴が開始されても自分で点滴の針を引き抜いてしまう、など)ことも少なくありません。
話が少しそれますが、ダイエット目的での薬物乱用は下剤の他に、利尿薬(腎臓や心臓が悪い人に処方される薬剤で、尿量を増やす作用があります)や覚せい剤など非合法薬物があります。
ただし利尿薬は誰にでも処方してもらえる薬ではないので、利尿薬を乱用している人は特に医療関係者に多いことが知られています。
非合法薬物についてはここではふれませんがどんな薬であっても、“(本来の目的とは異なりダイエット目的で)薬剤を使用する)”という発想がそもそも危険なのかもしれません。
脱水
利尿薬がダイエット目的で使用される理由は、尿量が増えることで体重が減るからです。下剤ダイエットでも下痢をすることで体の水分が失われ、その結果体重が減少します。
しかし本来が必要である水分を無理やりからだの外に出しているわけですから、からだの中は脱水状態におちいります。ふらつく、頭がボーっとするなどの症状が出ることもあります。また肌があれしまい、やつれた状態になります。
特に夏場は容易に熱中症になってしまうためにきわめて危険です。水着など露出が多くなる季節であるために、ダイエットに挑戦する人が増える時期ではありますが、下剤をダイエット目的で使うことは絶対にやめてください。
低ナトリウム血症
ナトリウムは電解質の1種です。下痢をすることで、からだから水分とともにナトリウムが失われ、その結果、血液中のナトリウムが異常に低い低ナトリウム血症と呼ばれる状態になることがあります。低ナトリウム血症になると元気がなくなる、疲れやすいなどの症状が出ます。
重症化すると、痙攣が出現したり、意識レベルが悪くなったりすることもあります。脱水と同様に、汗でナトリウムが失われがちな夏場は要注意です。
耐性
アントラキノン系と呼ばれる大腸刺激性下剤(大腸刺激性下剤については「下剤の効果」の項でも説明しています。興味のある方はご一読ください)は連用すると耐性が生じて、排便効果が弱くなることが知られています。
その結果、薬剤を増量することになりがちです。さらには精神的な依存性や精神異常をきたす可能性も指摘されています。
まとめ
ダイエット目的で下剤を使用することは非常に危険です
下剤ダイエット!?
薬物乱用
脱水
低ナトリウム血症
耐性