蠕動運動は消化管の収縮運動のことで、主に食道から直腸まで内容物を移動させる働きのことをさします。胃の蠕動運動が低下すると胃もたれや胸やけが、大腸の蠕動運動が低下すると便秘が起こります。
蠕動運動 のメカニズムについてご紹介いたします。
自律神経が司る食道・胃・腸など消化管の蠕動運動とは
蠕動運動とは
ヒトの消化管壁には外側に縦走筋と内側に環状筋という二層の筋肉があって、交互に伝播性の収縮をすると言われています。この収縮は消化管の内容物の静水圧を介して拮抗的に動きます。
つまり、一部がくびれて長くなったり、太く短くなったりを繰り返していると言うことができ、筋肉の収縮によって生じたくびれが波のように徐々に伝わっていくようにみえるものです。
食べ物が口に入ると、食道を経由して胃に入ります。胃は動きながら消化液を出して食べ物を消化して、腸に送ります。食べ物は腸を通過しながら、栄養分を吸収されます。栄養を吸収された食べ物のカスは体内の老廃物とともに便になります。
便が溜まってくると大腸や直腸で便を体外に排出しようとします。これら一連の食べ物の動きは蠕動運動によって行われています。食道から胃を経由して大腸を通り便となって体外に排出されるまで、消化管の中の内容物を順送りに移動させるのが蠕動運動の働きです。
蠕動運動は自律神経によって支配されています。ご存知のように自律神経は睡眠や消化など意識的には制御できない体の働きを支配している神経です。
自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあって、蠕動運動は副交感神経が優位になったときに活発になることが知られています。
食道の蠕動運動
食道は喉と胃をつなぐ長さ25㎝ほどの管です。食べ物は引力によって上から下に落ちるように胃に到達するのではなく、食道の筋肉の蠕動運動によって胃の中に送られます。
このことは寝ていても、逆立ちしていても食道から胃に食べ物を送ることができることからもよくわかります。
食道上部の輪状筋という横紋筋は自分で動かすことができますが、その下の平滑筋は自律神経の支配を受けていて、自分で動かすことができません。物を飲み込んだ際の嚥下反射によって蠕動運動が持続するために食べ物を胃に送ることができるのです。
胃の蠕動運動
胃は食べたものを溜めておく場所であるとともに食べ物を消化してお粥のような状態にして十二指腸に送る働きをしています。
胃が行う蠕動運動は胃体部の真ん中のやや下側から幽門部に向けて伝わっていきます。
1分あたり3~4回行われる蠕動運動は、始まってから幽門部に伝わるまで10~30秒くらいかかると言われています。幽門が閉じた状態で蠕動運動することによって、胃液と食べ物がしっかり混ざるので、食べ物がお粥状になります。
胃の蠕動運動が強くなってくると、胃の内圧が高くなって、胃の内容物が十二指腸へと運ばれることになります。
普通食の場合、食後10分で最初の運搬を始め、すべての内容物が十二指腸に運ばれるまでに3~6時間かかります。
三大栄養素の中では糖質が最も早く運ばれ、たんぱく質は糖質の2倍の時間がかかります。脂肪は最も時間がかかる上に胃の蠕動運動を抑えるために、脂肪を多く含む食品を摂ると胃もたれを起こす場合があります。
腸の蠕動運動
腸の蠕動運動は消化した内容物を腸の中で移動させたり、便として体外に排出する働きを担っています。なんらかの原因で蠕動運動を支配する自律神経のバランスがくずれたり、腸を支える筋肉が弱ったりすると蠕動運動が鈍くなります。
また、食事の全体量が減ることでも蠕動運動は低下します。蠕動運動が鈍化すると、腸の内容物は動かなくなってしまい、便秘や消化不良といった症状を引き起こしてしまいます。また、鈍っていた蠕動運動が急に活発になると下痢になってしまうこともあります。
正常な蠕動運動は痛みを伴いません。便秘が続いた後、排便の前に腹痛を感じることがありますが、この痛みは蠕動運動が乱れているために起こると考えられています。蠕動運動が鈍化したリ、乱れたままにしておくと、便秘がひどくなってしまうおそれがあります。
いったん便秘になってしまうと、腸内に長く留まる便が毒素を出すために腸内環境を悪化させます。
さらに、大腸は便から水分を奪いますので、便はますます硬くなって、排泄されづらくなってしまいます。このような悪循環に陥る前に腸の蠕動運動を活発にするような努力が必要となってきます。
腸の蠕動運動をよくするには、規則正しい食生活・一定量の食事量・ストレスの排除・適度な運動・お腹のマッサージなどが有効だと言われています。
まとめ
自律神経が司る食道・胃・腸など消化管の蠕動運動とは
蠕動運動とは
食道の蠕動運動
胃の蠕動運動
腸の蠕動運動