染色体異常が原因で発症する先天性の病気はたくさんあります。その中に、女性だけが発症する ターナー症候群 という病気があります。
成長していく段階で、外見は一般的な女児と比較しても個性として捉えられる程度の差しかないことがほとんどで、思春期を迎える頃まで気付かれないこともあります。
治療をしていない場合は低身長で女性にとって必要な女性らしさが見られず、いずれ妊娠、出産を望んだときに大きな問題が出てきてしまいます。
そのため、適切な治療を必要な時期に行うことが大切です。
女性しか発症しない、ターナー症候群(前編)
染色体とは
私たちの身体には約60兆個の細胞があり、その1つ1つが核を持っています。染色体はその核の中にあります。両親からそれぞれ23本ずつ合計46本の染色体を受け継ぎ、その中のDNA(遺伝情報をもつ遺伝子が含まれている)を基に身体がつくられます。
染色体は性別に関わりXとYの組み合わせでなる1対の性染色体とそれ以外の22対の常染色体で構成されており、性染色体の組み合わせによって性別が決まります。
男性の組み合わせはXY、女性の組み合わせはXXであるため、子どもの性別は男性のX染色体か、Y染色体のどちらが受け継がれるかによって決まります。
染色体異常とその原因
染色体異常とは、本来両親からそれぞれ23本ずつ受け継ぐはずの染色体の数が異なることや、構造に異常が起こるためいろいろな症状が現れることをいいます。染色体は身体をつくるために1本1本が大切な役割をしているため、正しい情報を持って、正しい本数である必要があります。
このような染色体異常がおこる原因は、はっきりとは分かっていません。受精卵ができる段階で行われる46本の染色体を23本に減らす細胞分裂がうまく行われなかったり、受精の際に異常が起きることで、染色体の数や構造に影響を及ぼすと考えられています。
染色体異常がある受精卵は成長することができずに知らない間に自然流産している場合がほとんどです。しかし、流産することなく成長することで先天性の染色体異常を持つ赤ちゃんが生まれるのです。
ターナー症候群とは
ターナー症候群は性染色体の異常によって女性にのみ発症する疾患です。性染色体は母親のX染色体をもつ卵子に、父親のXもしくはY染色体を持つ精子が受精しXXかXYの1対になることで性別が決まります。
ターナー症候群は、女性のXX染色体2本のうち1本が全くないため通常なら46本ある染色体が45本しかありません。
しかし、モザイクといってX染色体はXXの形で2本あるが、1本が部分的に欠けていたり、不完全な状態の場合があります。そのため、モザイクのターナー症候群では症状が現れにくくなります。
ターナー症候群の症状
ターナー症候群の女性に現れる症状は数多くあり、人それぞれ違います。その中でも主に低身長と、二次性徴が自然におこらないことが主な特徴になります。
出生時の身長はやや小さめであり、その後も成長ホルモンが不足しているため、成長期に一気に身長が伸びるということがなくゆっくりと成長していきます。治療をしなかった場合の平均身長は140cm前後だと言われています。
二次性徴が思春期になって自然におこる女性もいますが、ほとんどの場合は治療が必要です。女性らしさができてくる二次性徴がないことで乳房の発達や月経など、いずれ妊娠・出産といったイベントにも支障が出てきます。
これはX染色体の働きの中には卵巣の働きに関係する部分があります。しかし、そのX染色体が欠如していることで胎児期や遅くても1歳頃までに卵巣は萎縮してしまい、女性ホルモンが分泌されなくなることが原因です。
この他にも、現れやすい症状や合併症があるので注意して経過をみていく必要があります。
後編では、ターナー症候群の治療についてご紹介致します。
まとめ
女性しか発症しない、ターナー症候群(前編)
染色体とは
染色体異常とその原因
ターナー症候群とは
ターナー症候群の症状