卵巣腫瘍 の 手術後 は、手術方式により若干異なりますが、長期的にみると日常生活への影響はほぼありません。再発のリスクがあるため定期的な通院が必要であり、時には手術後も治療が必要となる場合がありますが、前向きに日々の生活を楽しむことが一番です。
今回は、そんな「卵巣腫瘍の術後」について詳しくお話しします。
卵巣腫瘍の手術後とは?
卵巣腫瘍手術の種類
卵巣腫瘍の術後といっても、手術の方式により疼痛や傷口などが異なります。手術方式は主に、「開腹手術」「腹腔鏡下手術」「膣式手術」の3種類があり、その他、チョコレートのう胞の内容物を吸引する特殊な手術もあります。各手術方式の適応は以下になります。
開腹手術の適応
- 卵巣腫瘍が大きい
- 周囲との強い癒着がある(繰り返す炎症や複数回の腹部手術歴があるなど)
- 悪性の可能性がある
縦に切る場合と横に切る場合がありますが、傷が目立たないように、ヘソ下で切開する場合が多いです。腫瘍の破裂時や茎捻転で緊急手術をする際は、開腹手術が選択されることが多いです。
腹腔鏡下手術の適応
- 予定手術の場合
- 腫瘍が大きすぎない場合
- 腫瘍の癒着が少ない場合
- 悪性ではない場合
傷は数cmであり、術後の負担は非常に軽いのが特徴です。海外では日帰り手術もあるくらいです。
腫瘍を腹腔鏡の穴から出して病変部分を切除する「体外法」と、腫瘍を体内で切除する「体内法」があります。良性腫瘍であれば、ある程度の大きさであっても、お腹の中で細かく切除して小さくしてから取り出すことも可能です。
膣式手術
- 予定手術
- 小さい腫瘍
- 良性腫瘍
- 癒着が少ない腫瘍
お腹に全く傷が残らないことや、術後のリカバリーが非常に早いことが利点で、徐々に膣式手術方式が増えてきました。しかし、術野(手術で確認できる範囲)が狭いため手術の難易度が高く、全ての病院で受けられるわけではありません。また、適応条件が限られます。
手術方式による術後の違い
開腹手術
開腹手術はお腹の痛みが強いため、硬膜外麻酔(局所麻酔)を術後に併用する場合が多いのですが、それでも痛みはあり、また体を動かせない辛さから、術後の夜が一番辛いと言われています。術翌日からは、食事も可能になり徐々に歩く練習を開始します。
お腹に力を入れられないため便秘になることも多く、腹筋を使う動作では傷口が痛みます。
約2週間程度の入院で、退院後も職場復帰までには約1ヶ月程度かかります。
腹腔鏡手術
傷口が非常に小さいため、痛みが少ないのが特徴です。痛みに対しては適宜痛み止め内服や座薬で対応します。手術が昼までに終わった場合は、術日の夜から食事が可能となります。翌日からは歩行も可能です。
入院期間は1週間程度で、職場復帰は約2週間後となります。海外では日帰りや翌日退院もあるくらい、体に負担の少ない手術と言えます。
膣式手術
お腹に傷がないため、術後の痛みは軽度です。痛みに関しては、適宜痛み止め内服で対応します。手術日の夜には飲食が可能になります。当日から歩行も可能です(場合によっては、看護師付き添い)。
入院期間は1週間程度で、職場復帰は数日後(翌日でもOK)から可能です。最も体に負担が少ない手術で、医療費に厳しい海外では日帰り手術が基本です。
その後の日常生活
手術で片方の卵巣を摘出した場合は、一時的にホルモンバランスが崩れてほてりや生理不順が起こることがあります。しかし、徐々に体が順応するので、それ以降は特に大きな問題はありません。
妊娠に関しては、片方の卵巣の機能が正常であれば自然妊娠は可能です。2年以上、妊娠に向けての性生活があっても妊娠しない場合は、卵巣摘出の有無にかかわらず「不妊症」になるので、パートナーと共に、早めに産婦人科を受診しましょう。一部では、若い間に卵巣を摘出すると閉経が早まることもあるようです。
両方の卵巣を摘出した場合は、ホルモンが出なくなるので、閉経と同じ状態になります。更年期障害(頭痛、めまい、のぼせ、イライラ、不眠など)と同様の症状が出る方もいます。症状が強い場合は、無理せず医師に相談しましょう。
その他、大きな術後合併症(膀胱損傷、尿管損傷など)がない限り、普段通り日常生活を送ることが可能です。
まとめ
卵巣腫瘍の手術後とは?
卵巣腫瘍手術の種類
手術方式による術後の違い
その後の日常生活