排卵のたびに傷つき、修復を繰り返す卵巣は、腫瘍ができやすい臓器です。卵巣にできる腫瘍は悪性と良性に分けられ、悪性の場合は卵巣がんであり、良性の場合は卵巣のう腫といいます。
卵巣のう腫 の 原因 は不明であり、予防策もありません。どのような病気であるかを知り、定期的に検診を受け、早期発見を心がけましょう。
原因不明の卵巣のう腫は、早期発見しましょう
卵巣のう腫の原因
前述の通り、卵巣は腫瘍ができやすい臓器と言われています。悪性腫瘍である卵巣がんは、排卵により傷ついた卵巣が修復される際、がん細胞が発生してしまうことが原因であると言われていますが、良性である卵巣のう腫の原因は不明です。
また、卵巣のう腫は20歳未満の若い世代でも発生する可能性がある病気です。良性であれば将来的にがん化することはないと言われていますが、卵巣のう腫の中でも子宮内膜症に起因するチョコレート嚢胞は、がんに移行する可能性もあるため注意が必要です。
卵巣のう腫の診断
卵巣のう腫は、初期には自覚症状がありません。妊娠や、婦人科の検診がきっかけとなり「卵巣の腫れ」が見つかることが多く、この腫れが、排卵のために生理的に腫れているものでない場合は腫瘍の疑いがあり、良性か悪性かを判別します。
一般的には定期的に経過観察をし、腫瘍が大きくなるようであれば血液検査やMRIなどを用い、腫瘍内部の構造や腫瘍マーカーの結果を見て対処を検討します。
患部から直接細胞を採取して診断を行わない限り良性か悪性かの確定診断ができないため、良性の可能性が高い場合は、卵巣のう腫として経過を観察します。
ただし、腫瘍がある程度大きくなると、卵巣と子宮をつないでいるじん帯がねじれる卵巣茎捻転(らんそうけいねんてん)が起こる可能性があるため、良性であっても切除手術を行います。
卵巣のう腫の種類
卵巣のう腫は、腫瘍の中に何が入っているかによって種類が分けられます。
漿液性嚢胞腺腫(しょうえきせいのうほうせんしゅ)
腫瘍の中はさらさらの液体であり、両側の卵巣に存在することもあります。こぶし大の大きさになります。
粘液性嚢胞腺腫(ねんえきせいのうほうせんしゅ)
腫瘍の中に粘り気のある液体が溜まる腫瘍です。閉経前の30~40歳代に多く見られ、両側に発生することは稀です。また、放置すると巨大化することがあり、嚢胞が破れた場合、腹膜炎を起こすこともあります。
成熟嚢胞性奇形腫(せいじゅくのうほうせいきけいしゅ)
卵巣のう腫の半数近くを占める最も多い腫瘍であり、乳児から高齢者まで罹患する可能性があります。卵子の元となる原始生殖細胞が腫瘍化したもので、摘出した腫瘍の中には髪の毛の塊や骨など、人間の体を構成するあらゆる組織が含まれます。
子宮内膜症性卵巣嚢腫
最後に、現代女性に増えていると言われる子宮内膜症性卵巣嚢腫にも触れておきましょう。この卵巣のう腫は、腫瘍中に血液が溜まり、その血液が古くなると茶色いチョコレート状になることから「チョコレート嚢胞」とも呼ばれます。
直接的な原因はその名のとおり子宮内膜症であり、通常、月経時に体外に排出されるはずの子宮内膜が卵巣にできてしまうため、卵巣に血液が貯留されてしまうのです。
子宮内膜症の発生原因も不明ですが、女性ホルモンであるエストロゲンの影響が指摘されています。
妊娠・授乳によりエストロゲンの活動が抑えられると月経も停止しますが、出産回数が減ったことにより、現代女性は月経回数が多くなっています。子宮内膜を増殖させるエストロゲンの影響を強く受けていることが原因と考えられています。
定期的に検診を受けましょう
このように、卵巣のう腫は自覚症状に乏しく原因不明のため、具体的な予防策がありません。自治体や企業が実施する検診を受診するだけでなく、小さな体の変化でも気軽に相談できるかかりつけの婦人科をつくり、定期的に受診することで早期発見を心がけましょう。
まとめ
原因不明の卵巣のう腫は、早期発見しましょう
卵巣のう腫の原因
卵巣のう腫の診断
卵巣のう腫の種類
子宮内膜症性卵巣嚢腫
定期的に検診を受けましょう